日本人は「みんなと一緒が好き」という大誤解 欧米と比べて集団主義的傾向が強いのは本当か

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とはいえ、100%集団主義者も、100%個人主義者も実は存在しません。同じ人間でも、時と場所と相対する人間によって、その行動を無意識に使い分けているはずです。

見知っている仲間同士の中では礼儀正しく振舞っていても、見知らぬ人に対して横柄な態度をとる人もいます。「旅の恥はかき捨て」といわれるように、昔から日本人は、そういう多面性を内包していたのです。

「孤人化する社会」は到来しない

同様に、冒頭で述べたベックのいう「個人化する社会」は間違いなく到来しますが、それがすなわち「利己的な個人主義者による無秩序な「孤人化する社会」にはなりません。旧来の共同体、たとえば家族が消滅することもないのでご安心ください。

ただし、家族が家族しか頼れないような「孤立家族」になるのではなく、仮に顔見知りではなくても、誰かの行動が誰かを支えるような、直接的な結びつきの代替としての「拡張家族」という形態が生成されていくべきと考えます。

それこそが「個人化する社会」における新たな共同体のかたち「接続するコミュニティ」なのだと思います。社会が個人化しても、結局、人は人とつながります。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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