原発処理水放出、反故にされた「漁師との約束」 「本格操業再開」移行前の方針決定に強まる反発
政府は4月13日、東京電力ホールディングス・福島第一原子力発電所の敷地内に貯まり続けている放射性物質トリチウムを含んだ水(ALPS処理水)を海洋に放出する方針を決めた。
経済産業省によれば、福島第一原発の敷地内のタンクに保管されている水に含まれているトリチウムの総量は約860兆ベクレル。原発事故前の放出管理値である年間約22兆ベクレルを上限として、海水で希釈し、数十年かけて海に放出する。
原子力規制委員会による許認可の取得や配管などの建設を経て、現在のタンクが満杯になる直前の2年後をメドに処分を開始する。梶山弘志経済産業相は13日の記者会見で、「(トリチウムを含んだ水の海洋放出は)長年の懸案事項となっていたが、(原発の廃炉や福島の復興のために)前に進めなければならない」と述べた。
方針決定のどこに問題があるのか
原発事故で炉心溶融(メルトダウン)を起こした核燃料は「燃料デブリ」と呼ばれ、冷却のために原子炉に注水が行われてきた。また、東日本大震災による損傷を受けた原子炉建屋には、コンクリートに生じた無数の亀裂などから地下水が流入している。
それらが混じり合って発生した汚染水をALPS(高性能多核種除去設備)と呼ばれる設備によって浄化処理したものが「ALPS処理水」だ。
福島第一原発構内に貯まり続けているALPS処理水の総量は約125万トン。およそ1000基のタンクで保管されている。国や東電は、処理水が保管されているタンクを減らさないと、燃料デブリ取り出しなどの廃炉作業のスペースが確保できなくなると説明している。
しかし、今回の方針決定には問題があると言わざるをえない。まず何よりも、関係者の反対を押し切って方針を決定したことが挙げられる。
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