「技術に土地勘ない人」が絶対知るべきDXの根本 感情的に判断するのではなく「正しく恐れる」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

自前で所有し管理するシステムを「クラウド」に対し「オンプレミス」と呼ぶのだが、オンプレミス型のコンピューターの障害は、それこそ銀行のシステムがダウンしATMが止まるとか、航空会社の予約システムが止まるぐらい社会問題にならないとニュースにならないだけで、日本中の会社でそれこそ日々起こっている。

むしろ何千億円もかけて作られ慎重に運用されている銀行の基幹システムですらダウンしていることを考えれば、クラウドの大規模障害は驚くほどレアだと言える。

世界的に著名なクラウドサービスの会社は、それこそ世界最高のコンピューター技術者を多数抱え、24時間の体制で、世界中に分散したクラウドセンターでシステムを運営している。オンプレミスで同じことができる会社はまずない。そしてオンプレミスで障害が出たら、復旧はすべて自力でやる必要があり、クラウドよりも大変なことになる。

利用側の使い方や運用方針に問題

問題はクラウドかどうかでなく、利用側の使い方や運用方針にあるのだ。事業継続性を重視するなら、すべてを二重系にするなどクラウドでもやり方はいろいろある。その分コストはかかるが、そういう運用をとらずに最低価格でクラウドを構成すれば、クラウドが止まれば当然業務システムも止まってしまう。

極端な話、アマゾンとグーグルの両方で同じシステムを動かしておけば、どちらかがダウンしても事業継続できるし、オンプレミスでやるより安くできるだろう。

今ならOSや関連ユーティリティーごとサービスシステムをパッケージ化して、簡単にサーバー間で引っ越しできる「コンテナ」や「オーケストレーター」など、各種のクラウドにまたがる連携利用を簡単化するための技術も発達しており、複数クラウドの利用はますます簡単になっている。

クラウドに対する過度の不信感のように、科学技術に関するトレードオフを理解し「正しく恐れる」ことは難しい。しかし、それが――ベストでないにしても、ベターを選ぶためのただひとつの道。そしてそれこそがオープンに必要な姿勢でもある。

オープンである以上、どうしても他人任せの部分は出てくる。ほかからの借り物の部分との接続で不具合も出る。それらのリスクを認識したうえで、それでも得られるベネフィットと勘案して、リスクを減らすための方策のコストも含め、すべてを「程度の問題」として比較考量できなければ、オープンは選べないだろう。

その比較考量をするには、科学技術に関する基本知識が必要になる。

次ページ科学技術の教養を身につけることは国民の義務
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事