「技術に土地勘ない人」が絶対知るべきDXの根本 感情的に判断するのではなく「正しく恐れる」

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日本のDXが遅れている理由を解説します(画像:tiquitaca/PIXTA)
企業や社会においてICT(情報通信技術)を活用した変革、すなわちDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれている。しかし日本では、官民ともに進んでいるとは言いがたい。その理由について、日本発のリアルタイム組み込み系OSのTRON(トロン)やユビキタスコンピューティングで世界に先駆けた坂村健氏は「科学技術に関する教養が足りない」と指摘する。
いったい、どういうことなのか。坂村氏の新著『DXとは何か 意識改革からニューノーマルへ』から一部抜粋・再構成してお届けする。

クラウドが「他人任せで不安」という日本企業

DXを実現するインフラとなっているのが、インターネット経由でさまざまなサービスを提供するクラウドだ。ネットの世界で進むオープン(「誰でも・何にでも」使えるという考え方)とクラウドは表裏一体――オープンがクラウドを進歩させ、クラウドがオープンを求めるという関係だ。

しかし、そのクラウドが他人任せで不安という人もいる。多くの場合、この手の人はオープンに対しても消極的である。若い世代では少ないが、特に日本の大企業の意思決定者の多くにその傾向があり、報道がそれに加担して、日本の企業でのクラウドの利用が世界に比べ、遅れた大きな理由となっている。

例えば、2019年8月23日にクラウドの分野で、世界最大手のアマゾンの東京地区でのサービスが6時間から10時間という長時間にわたって止まった。そのためクラウドを利用しているPayPay(ペイペイ)などのサービスが停止した。そうすると日本の報道の多くは「だからクラウドは危険」というような捉え方をする。

しかし「クラウドは危険だから、システムを所有し自前で管理すれば問題は起きない」などという話はない。むしろ、クラウドの大規模障害は珍しいからこそニュースになるのだ。

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