本題に戻りますと、Diversity&Inclusionは「社会的弱者の人に同情してあげよう」「余計なトラブルを回避しよう」ということではなく、マーケティングという、いわばビジネスを推進するための活動としてこれが指導されています。要は、Diversity&Inclusionを推進することがビジネスにもプラスになると判断しているということです。
もう少し具体的に言うと、こうした社会的に弱い立場にあるとされる方も消費者としてわれわれの製品を選択しますし、購買の意思決定にも関わってくるケースも多いでしょう。経済の発展、企業同士の競争とは、止めようにも止まらない途方もなく大きなエネルギーです。その競争原理によるエネルギーをつかってDiversity&Inclusionを実現させようという考えです。これは以前にご紹介したSDGsとまったく同じ考えですね。
色についての表現は注意が必要
さて、その「Inclusive Marketing Guideline」の中で書かれている英語についてみてみましょう。
Blacklist(ブラックリスト)→Deny list(拒否リスト)
Man hours(時間あたり工数)→Person hours, work hours, engineer hours
ジェンダーに関係する呼び方 (例:“guys”) →Folks, people, you all, y’all
He, She →They、their
Spokes Man(スポークスマン)→Spokes Person(スポークスパーソン)
White paper(ホワイトペーパー)→Research brief(概要報告書)
Dummy value(ダミー価格)→Placeholder value、sample value(サンプル価格)*Dummyという言葉には「まぬけ」というような意味があります。
black→Black
最後の頭が大文字のBlackは、黒人のことです。私はジャマイカ生まれで、たくさんの黒人の友人がいますが、彼らが黒人であるという事実を伝えるうえでBlackと書くことは問題ありません。小文字のblackは色の黒ですが、黒という色からネガティブな想起をさせる表現は回避されるべき、というガイドです。
色については、単独で使われるときは何の意味もなくても、何かの文脈で使われるときは注意すべき、とガイドラインでは警告しています。例えば信号機にみたててグリーン(これを日本語ではなぜ青というのか……)、イエロー、レッドというのをビジネスの進捗状況を示す言葉として使うことがしばしばみられますが、イエロー、レッドには悪い印象を与えてしまいます。このようにわれわれは知らず知らずのうちになんらかのバイアスを掛けて言葉を使っていることがあります。
また、気を付けなければならないのが「ステレオタイプ」です。男性は強い、金髪は美しい、というようなものです。企業の広告イメージなどでつい用いてしまいがちな表現で、確かにそういう人もいるでしょう。しかし一方でわが社は「強さ」「美しさ」がそれだけとは捉えていませんと主張することが”今日的”です。昨今のグローバル企業の広告などでは男女年齢人種などが多様に入り交じった表現を用いていますね。
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