ウィーンで「日本の抹茶」人気が急上昇した理由 国内では茶園の「高齢化」が進み縮小傾向だが…

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「コロナ禍においては袋売りの緑茶の売り上げが特に好調ですね。お店の人気メニューは抹茶ラテ、抹茶スムージー、おにぎり、手作り大福などです。お客さまは現地の方(主にオーストリア人)が90%、各国からの観光客が8%、在留邦人が2%といったところです」(マネージャーの久門千晃さん)

左:抹茶ラテ、右:抹茶スムージー(写真:©2009 Chanomavienna.)

店の経営が軌道に乗ったのは2009年ごろからで、開店直後は予想外の出来事もあった。

抹茶を使ったドリンクのことを『毒緑』という見出しで紹介されたのだ。毒緑とは、毒々しい緑色を表現する際の慣用句だという。

「そんなこともありましたが、健康食ブーム、スーパーフード人気などの背景に加え、飲料に適したおいしいウィーンの水道水という欧州の中でも恵まれた環境が重なり、一般的に広く認知される存在となりました。

今では、抹茶はスーパーやドラッグストアでも取り扱われ、MATCHA Latteを通常メニューに入れているカフェも珍しくなくなっています。SNSでのビジュアルのインパクトも十分で、日本文化に特段興味のない層にも消費を促しているように感じます」(久門さん)

 店関係者、業界関係者の熱意に加え、健康食ブーム、水道環境、インスタ映えが日本茶・抹茶人気を後押ししたということか。抹茶というすばらしい日本の文化が、音楽の都であり、カフェ文化発祥の地であるウィーンで広まっている。なんともうれしい話である。 

日本の輸出業者への影響は?

輸出側の状況はどうなっているのか。オーストリア向けに日本茶を輸出している抹茶メーカーなどにも話を聞いてみた。

年間出荷量の半分を輸出している愛知県西尾市の老舗抹茶メーカー「あいや」。1888年創業で1983年に米国向け輸出を開始して以来、海外向けの抹茶輸出に取り組んできた。2001年には米国に現地法人を設立し、その後もオーストリア、ドイツ、中国、タイに現地法人を展開している。最近の輸出状況はどうなっているのか。

「20年度は国内、輸出がちょうど50%ずつでした。輸出先はアメリカ、ドイツ、オーストリア、フランス、タイ、インドネシアなどです。オーストリア向けは、コロナ禍で巣ごもり需要が増え、抹茶、煎茶類の家庭用商品の売り上げがアップしました。オーストリアの現地法人の売り上げは、前年度比120%程度です。それまでは年次5%の売り上げ増でした」(広報担当者)

あいやのオーストリア現地法人「Kissa Tea GmbH」の担当者に日本茶の売れ行き、人気の理由などをあいや広報を通して聞いてみたところ、次のような回答があった。

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