ウィーンで「日本の抹茶」人気が急上昇した理由 国内では茶園の「高齢化」が進み縮小傾向だが…

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オーストリア、ヨーロッパならではの特徴もある。単なる日本茶人気というだけでなく、オーストリアやドイツなどでは有機栽培茶へのこだわりが強い点だ。「Cha No Ma」の久門さんもこう強調する。

Cha No Maの店内の様子(写真:©2009 Chanomavienna.)

「オーストリアは、有機栽培農地が人口比で欧州一という調べもあるそうで、消費者の有機栽培食品への理解と需要がとても高いのが特徴です。

最近は、日本の生産者の方々もヨーロッパにおける有機食品の需要の高さに合わせた商品開発や栽培を進めていらっしゃるように感じます。

実際に、弊店オープン当初に比べ有機栽培のお茶の種類も格段に増え、品質も良くなっていると感じます」

高品質の有機茶への需要が高いということだ。実際、茶の輸出量に占める有機JASの割合は、米国向けが約20%であるのに対しEU向けは約84%と圧倒的に有機が多い(2019年:農水省調べ)。

今後、オーストリアを起点にこうした動きが東欧・中欧圏に拡大していけば、日本の生産者にとっては、新たなビジネスチャンスとなる可能性を秘めている。

日本茶「海外進出」160年で本格普及へ

日本から茶が本格的に輸出されるようになったのは、1858年に徳川幕府が米国との間で日米修好通商条約を締結した後である。1859年に181トンが輸出されている。その後、政府は海外の博覧会を通じて日本茶の輸出拡大を図るが、米国以外では受け入れられなかった。その米国においては、20世紀初頭の段階では、緑茶にミルクと砂糖を入れて飲まれていたという。

かれこれ160年あまりを経て、日本茶・抹茶は世界を相手に本格的な広がりを見せ始めている。

「お茶はペットボトル」という文化が定着した国内市場よりも、おしゃれな抹茶文化が広まり、高品質の有機茶へのニーズが高い海外市場に活路を見出す動きが加速するのではないか。高齢化した日本の生産者が代替わりしていくなかで、国内から海外に目を向ける後継者が増えていくーー。ウィーンをはじめとする欧米での日本茶・抹茶人気の高まりを見るにつけ、そんな未来像が浮かんでくる。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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