映画「ゾッキ」に見る地方ロケと連携の新しい形 愛知県蒲郡市が官民一体で作品をバックアップ
実行委員を運営するにあたり、メンバーを3つの部隊にわけた。まず、「制作支援部隊」。これは、待機場所や食事、ロケハン協力などを担う。次に「宣伝部隊」。SNSなどを駆使した宣伝活動を市民の協力で展開するチームだ。
そして特徴的なのが、「産業開発部隊」。
「なんといっても映画は総合芸術なんで。東京のスタッフがただ映画を撮影して、帰っていった、ということではなく。われわれが帰った後も、皆さんに自分の映画だと思ってほしい。この人たちがいれば、他の映画スタッフが来たときも、映画作りをきっかけに地域を盛り上げることができると思った。そのために地産地消の商品として映画を残したい。事業として成り立たせ、資金を還元していきたい」(伊藤プロデューサー)
そうした思いから作られた部隊だが、愛知県名古屋市に本社がある雑貨店チェーン「ヴィレッジヴァンガード」とのタイアップで、山田孝之プロデュースのサングラスやカレンダーなどのグッズ制作や販売を行ったほか、衣料ブランドBEAMSとのコラボ企画なども行っている。
信用金庫の本店で常時上映
映画上映についても、蒲郡信用金庫の本店で、営業時間終了後や休日に常時上映を実施した。そもそも蒲郡市には映画館がなく、伊藤プロデューサーらの指導のもと、市民が協力して映画上映可能な空間を作りあげたという。結果、実行委員会も興行収入の一部を手にすることができた。
伊藤プロデューサーは2017年に、俳優の山田孝之、阿部進之介らとともに俳優支援のプラットフォームサービス「mirroRliar」を立ち上げている。その後も映画『デイアンドナイト』のプロデュースや、短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS」なども行ってきた。そしてそれらの活動で得たものが『ゾッキ』でも大いに生かされている。
「もともと山田さんとは、何か新しい映画製作の形を作りたいとずっと話し合ってきたんです。日本には才能あふれる監督やクリエーターが本当にたくさんいるんですが、お金の問題などで不眠不休が続き疲弊してしまい、作品のクオリティーが下がるということがあった。だからこそ、そういう慣習は防ぎたかった」(伊藤プロデューサー)
そこで本作では、スタッフの睡眠時間を守るために「予定シーンの撮影が終わったら、次の仕事開始まで8時間以上空ける」という、仕事のインターバル制度を設けた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら