「新卒の指導に悩む人」に伝えたい3つの心構え 受け入れ側も「緊張」を強いられている現実

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ある企業では、機器の前で立ち尽くしている新入社員に声をかけたら、「使い方がわからないので、スマホで検索していた」と答えられて、驚愕したという人がいました。ちょっと声をかけてくれたら済むのに、それをしないことへの驚きです。実際に私も新入社員対象の面談の中で、「質問ができない」と訴えるケースに出合うことが多くあります。

その理由は、「上司(もしくは先輩)が忙しそうなので、声をかけるタイミングがわからない」というのが最も多く、次いで、「困ったときに、そもそも何が問題がよくわからないので、どのように質問していいかわからない」。そして、入社後1カ月くらい経ったころから聞かれるのが、質問をしにいったら、嫌な顔をされた、もしくは「また?」と言われてしまったことによって、そのあと聞きに行けなくなったというものです。

コミュニケーションは、日々少しずつ育むものです。仕事を教えるときは要所を押さえ、ヒントになるようなアドバイスをしながら並走し、「考える習慣」を身に付けてもらうこと。そして、ヒントをもとに自分で考え、わからなければ質問するというサイクルを構築することが望まれます。

●特徴2「想定外」が苦手

「想定外が極端に苦手」というのも新卒世代の特徴のひとつです。ものを買うとか、どこかへ遊びにいくなど、生活上のあらゆる場面で、何か行動を起こす前に、まずはネット検索し、ある程度の情報を得て自分なりの予想をつけてから動きはじめる習慣が身に付いています。そのため、想定外の事案を前にすると動きが止まってしまう傾向があります。

イレギュラーな案件など「本人が想定していなかった仕事」を振るときは、仕事の進め方やスケジュールを具体的に伝えるなど、仕事の見通しがつくように工夫する必要があるでしょう。もちろん急を要する案件も出てくるとは思いますので、臨機応変に対応してもらうよう、本人が考える100%の準備でなくとも、走りながらやることを促すことができるとよいかと思います。

●特徴3「電話」が苦手

「電話が苦手」と言われるようになって久しく、この時期になると取りあげられることの1つかと思います。学生時代からSNSやメールでコミュニケーションをとってきて、親しい友人とさえ通話することがほぼない状況で、通話というコミュニケーションをトレーニングする場が失われています。

また、文字ツールは、自分の好きなタイミングでゆっくりと言葉を選んで意思伝達することが可能なため、瞬時に反応しなければならないコミュニケーションに不慣れなのです。それゆえに、業務の初期段階で失敗しやすく、それが苦手意識になって電話を避けるようになると、負のスパイラルに陥ります。まずは、社内のやり取りで練習する、伝える内容をテキスト化するなど、電話に慣れてもらう指導が必要です。

積極的に関わり、相手を正確に理解していくことが重要

指導や指示は、相手のことを理解できないとうまくいきません。まずは、指導する相手の特徴を知っていただけたらと思います。

また、個人差もあるため、個別に関わっていくことが重要です。想像や決めつけで人間性を判断してしまうと、正確に相手を理解できず、どこかで必ずコミュニケーションの行き違いが発生します。一度コミュニケーションの行き違いが起こると、お互いに関わることを避けるため、指導はますます難しくなってしまうと思います。

関わり方に苦手意識がある方々こそ、定期的に対話をする機会を作るなど、積極的に新卒世代と関わってみてください。今回のアドバイスが、よりよい関係性を育む一助となることを願っています。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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