観客減に苦しむスポーツ界が見誤っている本質 コロナ禍で配信視聴者を増やす方向は正しいか
一方、テレビやネットで目にしたプロスポーツの状況は少し異なっていた。本来、スポーツ観戦の醍醐味は、スタジアムでお気に入りのチーム、選手を仲間と一緒に応援することであり、そんなスタジアム自体の雰囲気を楽しむことだ。リバプール、ドルトムント、セルティック、FC東京などのチームのホームスタジアムで流れる“You’ll never walk alone”に代表されるアンセムや選手ごとのチャントは、サポーター同士が、ときには選手も含めて一体感を感じる瞬間だ。
しかし、スタジアムは入場制限され、声での応援が禁止されている。かつての賑やかさには程遠く、一体感を感じるには少し時間がかかりそうだ。
プロ野球の開幕から約2カ月が過ぎた8月中旬、真夏の夜の湿気はまとわりつくようで少し不快だった。
ただ、一歩東京ドームに入るとその中は快適で別世界だ。歓声も太鼓の音もラッパが鳴り響く音も聞こえず、代わりに球音と選手たちの声がはっきりと聞こえた。良いプレーが起こると観客席からは太鼓やラッパの代わりに、拍手が鳴り響く。やや隙間の空いた隣の席からは今起きたナイスプレーについて語り合う声が聞こえた。
サッカーでも音を通したリアルな体験ができた
平日の亀岡(京都府)の「サンガスタジアムby KYOCERA」でも同じような体験をした。秋が深まり始めた9月後半の夜はすでに肌寒い。しかし、スタジアムに入ればナイターの照明が緑のピッチを眩いばかりに照らしている。その美しさにしばし寒さを忘れる。
観客席の間の微妙な距離は野球の球場と一緒だ。亀岡のスタジアムはピッチと観客席が近くボールを蹴る音がやたらとよく聞こえる。選手たちは試合中ずっと声をかけ合っている。時折レフェリーの笛でプレーが止まると選手たちの不満げな声もよく聞こえてしまう。
以前なら選手たちのプレーのみに目が行っていたのが、選手たちの声を通した生のやり取り、球音、いや蹴音とでもいうのか音を通したリアルな体験ができた。
スポーツビジネスは、スポーツクラブやスクール、ジム、部活など自分でプレーを楽しむDo(する)スポーツと、プロスポーツ、学生スポーツなどの観戦を楽しむSee(観る)スポーツに分けることができる。
スポーツクラブなど人が集まるエリアでのDoスポーツはまだ制限があるものの、施設に頼らず外で、あるいは、家で体を動かす人の数は明らかに増えたように感じる。
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