観客減に苦しむスポーツ界が見誤っている本質 コロナ禍で配信視聴者を増やす方向は正しいか

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クラウドファンディングはある一定の成果を収めたクラブもあるようだが、何かの対価というよりは非常時にお願いするような性質のものなので、繰り返し行うようなものではない。ギフティングに関しては物珍しさで今後の新しいサービス形態として一時話題になったが、大きな成果を得たという話はあまり耳にしていない。

この状況だからこそなりふり構わずチャレンジしたという意味で十分やる価値はあったと思う。実際、知恵を大いに絞ったクラブに対し、ロイヤリティの高いファンはそれなりに反応し、クラブをサポートする行動を起こしたようだ。

ただ、スポーツビジネスの足元そのものが揺らぎつつある現状の抜本的な解決策として、この手のサービスだけでは少し難しいように感じる。

リーグ戦再開後、観客のスタジアムへの足が遠のいてしまったが、スタジアムに行かない分、メディアを通してお気に入りのスポーツ、チーム、選手の情報を手にするための活動は活発になったのだろうか?

サッカー情報に飢えて戻ってきたファンは少なかった

今では、オンラインメディアに関してはかなり詳細にユーザーに関するデータが手に入る。筆者が企画、運営しているオンラインサッカー専門媒体がどれくらい読まれたかについてデータを確認すると、ページビュー数の月間平均はピーク時と比較すると半数くらいになってしまっていた。

3月、4月、5月とコロナの緊張感が高まっていたときは、試合は行われていなくても今後のサッカーを危惧してか、それなりに読まれていたため、ある程度のページビュー数はあった。この時期、主に欧州リーグのコロナ禍における開催方針、チームや選手の感染情報、活動状況などの記事が読まれていた。

やがてシーズンが再開し、純粋にサッカーを心待ちにしていたファン、スタジアムに行くことは叶わないが、サッカーの情報に飢えたファンたちがサイトに戻って来てくれるのだろうと思っていた。もちろん戻ってきた。

しかし、その数は期待をはるかに下回るものだった。

感染を恐れてスタジアムに行くことがはばかられるのは理解できる。そうであれば、行けない分メディアを通して少しでもお気に入りのチーム状態を知りたい、遠くからでも情報に触れたいと感じるファンが多いと思っていたが、実際は、それほど多くのファンは戻ってこなかった。スタジアムだけでなく、サッカーそのものと距離を置いてしまったかの如く。

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