念のため、在香港日本国総領事館に問い合わせたところ、やはり「香港で接種されているものと、アメリカや日本で接種されているCominartyは同一のものだと認識している」旨回答があった(なお、本記事では「BioNTech製」と表記を統一)。
以上を元に、香港政府のワクチン情報サイトを細かく見ていくと、Fosunが名を連ねているものの「ドイツ製」との記述がある。2月27日には、BioNTech製ワクチンの第一弾を運ぶキャセイパシフィックの航空便がドイツから到着したことも報じられていることから、現在接種されているものはドイツで製造されたものと見て間違いはないようだ。
中国で働いていたり、会社を持っていたりすればビザの発給スピードは死活問題になる。中国外務省の香港出先機関である「外交部駐香港特派員公署」は3月の記者会見で「(Cominartyなど)他のワクチンを接種したビザ申請者は優遇措置の対象になるか」という質問に対し「ビザ申請者は、自身でワクチン接種機関に、自身が接種したワクチンが中国産か否か確認することができる」と回答し、明言を避けた(3月24日付huanqiu)。在香港日本国領事館を通じて問い合わせたが、期日までに正式な回答はなかった。
もっとも、今後はBioNTech製ワクチンをFosunが製造する可能性もある。ロイター通信(2020年12月30日付) は中国メディア「Caixin」の記事を引用し、BioNTech社が開発したワクチンを生産するため、BioNTech社とFosunがジョイントベンチャーを設立し、中国に施設を建設する計画があると報じた。
この製造施設は第一段階では、ワクチン2億回分の製造能力を持つという。製造開始時期などは未定。この計画が実現すれば、現時点で香港で使用されている2種類のワクチンは共に「中国で製造されたワクチン」となる可能性が高い。
ワクチンを打つ人打たない人とわかれる
さまざまな国籍やバックグラウンドの人々が集まる香港では、ワクチンに対する考え方もいろいろある。しかし現状の接種率が低迷し「ワクチン余り」を起こしている現状からは、接種者はいまだ少数派であることは確かだ。
香港人のアンジェラ(40代女性)は両親がいずれも70代と高齢。一刻も早くワクチンを受けさせたいと考えていたが、接種後の死亡例や副反応に関する報道を見て、接種させるのが恐ろしくなった。彼女自身を含め、親族は誰もワクチンを接種していない。
「もし両親にワクチンを打たせた後に亡くなってしまったとしても、ワクチンのせいではないとどうやって証明できるでしょうか。親族からも責められます。もしそんなことが起こったら、私は悔やんでも悔やみきれません」
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