香港「2種の新型コロナワクチン」が呼ぶ波紋 低接種率の背景に不信と恐怖が見え隠れする

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後者については、そもそも感染してしまった日本人については、まだ有効な抗体ができていなかっただけのように考えられる。同女性がBioNTech製ワクチンを接種したのは1回だけで、発症のわずか2~3日前。世界で最も信頼度が高いとされる医学誌『The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE』に掲載された論文等によると、同ワクチンの2回目接種(通常21日~28日後に2回目を接種)直前の予防効果は約50%しかない。

一方、アメリカ疾病対策センター(CDC)が3月29日に発表した調査結果では、同ワクチンは1回の接種でも効果的だとしているが「BioNTech製ワクチンの1回目の接種から“2週間後に”感染リスクが80%低減した」としている。しかし、そうした背景まで報じないメディアも多い。

接種しないことを責めてはいけない

過去2年間にわたって未曽有のストレスにさらされてきた香港では、時に冷静に情報を発信したり、受け取ったりすることすら難しい――。香港のワクチン接種率が伸び悩んでいる要因には、こうした社会的な背景がある。

「ワクチンを接種したくない、という方は一定の割合でどこの国でも存在します。重要なのは、接種しないことを責めないことです。そして最も良くないのは、政府機関やメディアが不確実な情報を元に、不安を与えるメッセージを発信してしまうこと。ワクチンの有効性や安全性について透明性が高く、科学的根拠に基づいたデータを伝え続けることが、接種率の向上に最も大切だと思っています」(谷口医師)

富谷 瑠美 香港在住コラムニスト

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とみや るみ / Rumi Tomiya

2006年早稲田大学法学部卒。アクセンチュアで全国紙のITコンサルティングを担当したのち、日本経済新聞電子版記者、リクルートグループの編集者を経て、子連れで香港に移住。Twitterはこちら。

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