香港「2種の新型コロナワクチン」が呼ぶ波紋 低接種率の背景に不信と恐怖が見え隠れする

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周囲の友人・知人の香港人の中には「BioNTech製の接種が再開されるまでワクチンは接種しない」というばかりか「そもそも香港政府が供給するワクチン自体信頼できない」という人も少なくない。

2019年6月に端を発した民主化デモと、それに続く民主派の拘束、国家安全法の施行などで香港市民の間には香港政府への不信が根強い。もしワクチンに関して不都合な事実が起こったとしても、その情報が公開されないのではないか、というのだ。

しかし、こと新型コロナウイルスに関して言えば、パンデミックにより世界中の研究者が総力を挙げてワクチンの開発に取り組んでいる。では、香港で接種されている2種のワクチンは他国の研究者にはどのように評価されているのだろうか。

Sinovac製は「評価不能」

「BioNTech製のワクチンは基礎データだけでなく、第3相臨床試験までの実施結果が公表されており、有効性・安全性ともに極めて優れていることが科学的に証明されています」。千葉大学医学部附属病院感染制御部・感染症内科の谷口俊文医師はそう語る。

ワクチンが開発されたのち、各国で承認を受けるには3段階の治験が必要になる。第1相臨床試験は少人数の治験者に対して、主に安全性を確認。第2相臨床試験は同じく比較的少人数の治験者に対して免疫反応や安全性を確認し、ワクチンの接種量や間隔、回数などを決めるために実施される。そして最後に、ワクチンの有効性を実証するために、大規模に実施されるのが第3相臨床試験だ。

アメリカの感染症専門医でもある谷口医師によると、同ワクチンを2回接種した場合の有効性は95%。これはBioNTech製のワクチンを受けた人は、受けなかった人と比べて発症率が95%減るということを意味する。同ワクチンは日本の菅首相やアメリカのバイデン大統領も接種済みで、シンガポールでも承認され接種が始まっている。

一方、Sinovac製はというと、「第1/2相臨床試験の結果のみが査読付き論文で公開されていますが、第3相臨床試験の結果は公開されていません」(谷口医師)

アメリカの臨床試験で確認された副反応の種類と発生率(谷口医師らが運営する新型コロナ情報サイト「こびナビ」 より抜粋)BioNTech製のワクチンにも上記のような副反応が報告されているものの、これは抗体を作るための免疫反応がしっかり起こっていることの証でもある。

さらに、谷口医師は副反応や有効性についても課題があると指摘する。「アメリカの『副反応報告システム』が確立しているため、BioNTech製のワクチンは副反応に関するデータもすべて公開されています。データの公開と透明性は有効性と安全性を判断するうえで極めて重要です」(同)。

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