一方、Sinovac製のワクチンは現在、複数の国で第3相臨床試験を実施中だ。中間報告によると、トルコで91.25%、インドネシアでは65.3%の有効性が示されたと発表されている一方で、ブラジルの臨床試験では当初78%とされた有効性が、50.4%に下方修正されるなどのばらつきが出ている(2021年1月15日BBC報道)。
「Sinovac製ワクチンもデータを公開して安全性を担保し、WHOが推奨する70%以上の有効性を示すことができれば推奨されやすくなるはずですが、中間報告の時点でこれだけバラつきが出ている。現時点で科学的根拠を持って有効性について語ることすらできない状況。データなしには、日本では推奨どころか話題にのぼることすらないでしょう」(同)
同様の理由で、シンガポール政府が輸入したSinovac製ワクチンは、2月23日に同国に到着してから、1カ月経っても使用されないまま。2021年3月29日付の朝日新聞によると、シンガポール政府は「評価に必要な追加データの提出を待っており、使用の承認はしていない」「(ワクチンの)評価で妥協はしない」としているという。
ドイツ製BioNTechもやがて中国製に?
一方で、香港ではBioNTech製ワクチンにも不安を抱いている人々がいるのはなぜなのか。それは、「(香港で接種される)BioNTech製ワクチンはどの国で製造されたのか」という点がしばしば議論になるからだ。理由は中国政府が表明したビザ優遇施策にある。
2021年3月20日までに、在日中国大使館を含む世界各地の23の大使館が「中国製のワクチンの接種者に対して、中国渡航に必要なビザ申請の便宜を図る」 と発表。
パンデミック発生以降、中国への入国に必要なビザの申請要件が非常に厳格化されているが、中国製ワクチンの接種者に対してはパンデミック発生前と同様の要件で足りるとした。
そもそもワクチンの予約サイトや各メディアの報道なども非常にややこしい。BioNTech社はドイツを拠点とするバイオ医薬品ベンチャー企業だ。同社がアメリカの大手製薬会社Pfizerと開発したのが「Cominarty」。しかし、香港のワクチン予約サイトで名を連ねているのは、アジア圏の販売流通を担当している中国のFosunで、Pfizerの名前はない。
「香港で接種されているCominartyは、アメリカや日本で接種されているものとは別のCominartyなのか……?」と疑問が湧いてくるが、ロイター通信などは香港のCominartyに関するワクチン報道で「ファイザー製」という呼称を使っていることがある。
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