センバツ「私学と公立の格差」埋まらぬ根本原因

「特待生」や「野球留学」によるアンバランス

別の有力校の監督は「親子面接の場で、“君は多分、3年間で試合に出ることはないけど、それでもいいか?”と聞くんだ。そこまで言っても、ほとんどの子が“入学させてください”というんだよ」と嘆く。

少子化によってどの学校も生徒数の維持に四苦八苦している。私学が多くの野球選手を受け入れるのは「経営」のためでもあるのだ。

甲子園で活躍する私学は注目度が上がり生徒数は増加する。選手数が多くなれば競争も激化し、選手のレベルはアップする。学校もグラウンドや練習環境に設備投資をする。一方、公立高校は入学者の減少で選手数も減少する。厳しい財政では練習環境の整備も進まない。結果的に選手のレベルはダウンする。

広がる私学と公立の格差。画像はイメージ(写真:筆者撮影)

このようにして公立と私学の格差は、ますます広がりつつある。甲子園に限定しても、昨今の私学の実績は圧倒的である。

新学制となった1948年から1960年までは、春夏の甲子園出場校の84%が公立校で、私学は16%にすぎなかったが、1990年代には50%を超える。2006年から19年まででいえば68%が私学、公立校は32%と完全に逆転した。

私学偏重の補填策としての「21世紀枠」

今春の甲子園でも32校のうち、私学は72%の23校、公立は28%の9校にすぎない。そのうち4校は「21世紀枠」だ。「21世紀枠」は2001年に制定されたが「部員不足やグラウンドがない、豪雪地帯といった学校・地域の特性などの困難を克服した学校や、ボランティア活動といった野球以外の活動での地域貢献で他校の模範となる学校を選出」する。

今大会までに「21世紀枠」で選ばれた57校のうち、2013年の高知県、土佐高校を除く56校が公立。実質的に私学偏重の補填策になっている。

「21世紀枠」の選出理由にはしばしば「部員全員が地元出身」「近隣中学出身」という文言が並ぶ。意識的かどうかはわからないが、全国から「野球留学生」を受けいれている私学に対する強烈なアイロニーになっている。

先日、ある私学の元名将が全国から有力選手を集めている大阪桐蔭を「やりすぎだ」と言い、何らかの規制が必要だといったが、その私学も全国から有力選手を獲得して甲子園で勝ってきた。筆者は「この人が今さら何を言うか」という思いがした。

私学偏重を問題視する声は、かなり以前からあったが、この問題を是正する大きなチャンスがあった。

2007年3月、西武ライオンズの「裏金問題」に端を発して、一部私学が「日本学生野球憲章」に抵触する「特待生制度」で選手を獲得していることが明らかになった。日本高野連の調査では特待生は全国377校、7920人にのぼった。

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