センバツ「私学と公立の格差」埋まらぬ根本原因

「特待生」や「野球留学」によるアンバランス

甲子園の出場校は、戦前から都市部は私学が多く、地方は公立学校が多かった。しかし近年は、全国的に私学が公立を凌駕しつつある。

少子化とともに全国の公立高校では、統廃合が進んでいる。公立高校は2010年には全国で3780校あったが、2018年には3559校と221校も減少している。甲子園を沸かせた高校も例外ではない。1995年春の優勝校、香川県立観音寺中央高は、2017年、香川県立三豊工業高と統合されて観音寺総合高になった。

私学と公立でグラウンドや設備の差がある。画像はイメージ(写真:筆者撮影)

少子化に加え、地方財政の疲弊によって部活動予算が削減される学校が多く、公立高の野球部の多くは財政難に苦しんでいる。グラウンドや練習施設も老朽化している。さらに部員が減少したために「連合チーム」を組む学校も増えてきた。

私学が甲子園に注力するワケ

一方で、少子化によって私学も変化した。私学が学校を存続させるためには生徒数を維持、拡大しなければならない。そこで「大学進学」「スポーツ」などに特化した教育を行うようになった。その典型が「東京大学」と「甲子園」だ。

東京大学に多数の合格者を出す高校は、全国から注目される。そのため多くの私学が学区や都道府県を越えて成績優秀な生徒を入学させ、受験中心の教育を行っている。このため毎年春の「東大合格ランキング」では、聞きなれない新興私学がランクインするケースが目立つ。

甲子園で活躍する高校も注目される。そのため有力私学は全国の有望選手を勧誘する。いわゆる「野球留学」だ。巨人の坂本勇人、楽天の田中将大は兵庫県の同じ小学硬式野球の出身だが、坂本は青森県の光星学院(現八戸学院光星)、田中は北海道の駒大苫小牧に進んだ。野球の場合、強豪私学の多くは「野球部寮」を設け、トレーニング設備も完備し、極端に言えば四六時中「野球漬け」になることができる。

こうした私学には有力選手以外にも甲子園に憧れて門を叩く中学生がやってくる。その大部分は甲子園はおろか、試合に出るのも難しいが、私学はそうした無印の選手も入学させる。このため部員数が100人を超えることも珍しくない。

実は私学の監督の多くは、100人以上の選手がいる現状を決して喜んではいない。ある有力私学の監督に「どれくらいの選手数が適正と思うか?」と聞くと即座に「ワンバス」という答えが返ってきた。この監督は野球部バスの運転手もしている。

ワンバスとは大型バスの定員=45人だ。「それ以上は目が届かない。でも学校はどんどん受け入れろというんだ」という。また試合に出る望みがない選手を多く抱えるのは、精神的にも「つらい」という。

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