時短拒否の外食企業が都に「104円請求」する訳 グローバルダイニング社長が胸中を激白!

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――法廷の場でなければ行政が説明責任を果たさないというのも理由の1つですか。

倉持:そこも、この訴訟の大きな意義の1つ。記者会見や議会では逃げ切れることができるだろうが、裁判ではそうはいかない。(これまでの感染症対策や、命令を出した理由についても)都は説明責任や立証責任を負い、明らかにする必要がある。

請求額は1店舗1円×26店舗×4日間

――実際に受けた損害などの金銭的な理由が訴訟に踏み切った理由ではないのでしょうか。

長谷川:本質的にはそこではない。だからこそ、請求額は1店舗1円×26店舗×4日間(命令が出てから緊急事態宣言が終わるまでの日数)で104円。本音を言えば、損失を戻してほしいという気持ちもゼロではないが、僕らが言っても共感を得られないと思った。

――時短要請に応じたほかの大手チェーンからは、「社会的責任として行政からの時短要請を受け入れた飲食店が苦境に陥り、要請に応じなかった貴社の売り上げが増加したことに疑問を感じる」などの批判もあります。

長谷川:時短するしないは各社の判断だ。このコロナ禍を生き残るために必死で営業してきた結果、売り上げ増となり、私たちも驚いている。行政からの要請を無条件で正しいと認識することが、民主主義だとは思わない。私たちは行政に任せたままでは会社を存続できないと考え、通常営業を行う判断をした。自身で考え意見を発することが、国をよくしていくことだと考えている。

長谷川耕造(はせがわ・こうぞう)/1950年生まれ。早稲田大学を中退し、欧州を放浪。1973年有限会社長谷川実業設立。1985年長谷川実業株式会社(現株式会社グローバルダイニング)代表取締役。2010年3月より現職(撮影:今井康一)

――今回の訴訟では、クラウドファンディングで訴訟費用などを募る、ウェブ上のプラットフォーム「CALL4」という公共訴訟を利用されています。

倉持:コロナ禍の政策や法律の中身により、自由がやんわりと真綿でしめつけられるような空気感であふれている。今回の裁判において原告はグローバルダイニングだが、コロナによるしわ寄せを受けた人や、声をあげられないで店を閉めた人など、違和感・閉塞感を持っている人は全員当事者だ。事実、本訴訟のクラウドファンディングでは、1000万円という目標額を1日で突破し、CALL4史上過去最大の寄付額が集まった。

――法令の違憲を争う以上、最高裁にまでもつれこみ決着まで数年近くかかる可能性もあります。その場合、既にコロナの脅威がなくなっているようにも思いますが、それでも訴える意義があるとお考えですか。

倉持:1~2年でコロナが収束したとしても、コロナを機に露呈した張りぼての民主主義、張りぼての法の支配への疑問はのこる。それを一番厳格に判断してくれるであろう司法の場で提起するのは意味があることだと思っている。

長谷川:表現の自由とか法の下の平等はコロナが収束しても大切だし、日本は民主主義の国だと信じたい。

【情報提供のお願い】東洋経済では、外食業界が抱える課題を継続的に取り上げています。こちらのフォームでは飲食店経営者や従業員の方々からの情報提供をお待ちしております。
中尾 謙介 東洋経済 記者

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なかお・けんすけ

1998年大阪府生まれ。現在は「会社四季報」編集部に在籍しつつ水産業界を担当。辛い四季報校了を終えた後に食べる「すし」が世界で1番美味しい。好きなネタはウニとカワハギ。

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