日本が何度もコロナ対策に失敗する本当の理由 「短期決戦思考が根本原因」というのは間違い

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日本は再びコロナ対策に失敗しようとしているのだろうか。そうだとしたらその失敗の「正体」は何か(写真:ZUMA Press/アフロ)

この持ち回り連載の筆者の1人であるかんべえ氏(双日総合研究所・吉崎達彦氏)に彼のブログで「バブル議論はもう飽きた」(3月13日分を参照)と言われてしまった。

確かに、このところ、こちらのホームグラウンドのような「バブル」という土俵で話をしていた感はある。なので、今回は彼の土俵で相撲をとってやろうじゃないか。ちなみに、バブル議論がバブルになっている時点で、バブルであることは明白である。要は「今はバブルか否か」が議論されているのではない。この明らかなバブルがはじけるのは「今かずっと先か」という議論をしているのである。この点は、この連載のもう1人である山崎元氏の議論が明快である。

日本の「失敗の本質」は短期決戦思考?

この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

さて、かんべえ氏の土俵といえば、戦争である。以前も論争したことがあるが、彼の大好きな「失敗の本質」である。

新型コロナの政府対応の迷走ぶりに、かんべえ氏が、テレビでのコメントやコラムで、彼が再び「失敗の本質」を引用していたのだが、私も丁度、再び「失敗の本質」を読み返していたところだったので、再戦を挑むことにしたのである。

「失敗の本質」とは、もちろん、野中郁次郎教授など 6 人の研究者によって1984年に出版された同名の書籍に由来する。「大東亜戦争」における6つの局地的敗戦をケーススタディとし、組織論や経営学、政策決定論などの専門家が「敗戦=失敗」の原因を読み取ろうとしたものだ。

彼らの結論は、日本軍とアメリカ軍の戦略・組織特性比較にまとめられている。すなわち、日本軍は戦略において、目的不明確、短期決戦思考、帰納的戦略策定で、戦略オプションが狭く、技術体系は一点豪華主義。組織は集団主義構造で、属人的統合(人間関係)で、失敗からの学習を軽視し、評価は 動機・プロセスでなされた。

一方、アメリカ軍の戦略は、目的明確、長期決戦思考、演繹的戦略策定で、戦略オプションが広く、技術体系は標準化されていた。 組織は、構造主義(システム)で、システムによる統合がなされ、失敗からの学習を極めて重視し、評価は結果によりなされた。

この対照から、かんべえ氏は、短期決戦思考が失敗の本質と考え、これが諸悪の根源だと指摘する。そして、新型コロナ対策の日本政府、いや日本社会の対応が失敗に陥っているのは、短期決戦思考にあるからだ、と示唆しているのである。

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