ばらまきバイデン政権の裏で起きる意外なこと

長期金利上昇やインフレ以外にも心配の種?

アメリカ国民に向け演説するバイデン大統領。初の成果をあげたが、いいことばかりではない?(写真:AP/アフロ)

3月11日、ジョー・バイデン大統領が「2021年アメリカン・レスキュー・プラン法案」(ARP法)に署名した。1.9兆ドル(約200兆円)の追加経済対策が、これでめでたく成立した。この日は政権発足からちょうど50日目。バイデン氏はこれまで多くの大統領令にサインしてきたが、議会を通して成立した法律はこれが最初の成果となる。政権にとっては「初白星」と言っていいだろう。

国民の受けが良い「大規模な財政支出」に成功

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この法案は何より国民の受けが良い。理由は簡単、「国民1人1400ドル」の給付金が入っているからだ。

年収による上限があるけれども、それでも85%の国民の手元に小切手が届く。アメリカでは昨年春に1200ドル、昨年末に600ドルの給付金が行われているけれども、今回が最大の金額となる。

3月14日に切れる予定だった失業保険への週300ドルの上乗せ金も、このまま9月まで延長されることになる。また、児童税額控除が2000ドルから3600ドルに引き上げられる。所得税を払っていない家庭にも適用されるので、子育て家庭には大助かりだろう。

今回のARP法は、「最貧困層20%の所得を20%かさ上げする」のが売りである。トランプ時代の経済対策は、減税など富裕層や大企業向けのトップダウン型であったが、バイデン政権が目指すのはボトムアップ型の対策と言えそうだ。

1.9兆ドルという規模は、対GDP比で9%に及ぶ。オバマ政権が実施した「2009年アメリカ再生・再投資法」(7870億ドル)は5.5%であった。そのときは「大きい!」と驚いたものだが、今では「規模が足りなかった」という評価になっている。国民に対するアピールも十分ではなく、オバマ政権に対する浮揚効果も乏しかった。たぶんバイデン氏は、これからARP法の効果を宣伝して、政権支持率の向上に結び付けようとするだろう。

振り返ってみると、法案成立の難所は案の定、上院における審議であった。どちらかと言えば、対立する共和党よりも民主党内部の説得のほうが難物であった。議席数は50対50で拮抗しているとはいえ、民主党が伝家の宝刀「財政調整措置」を使ったために、共和党はフィリバスターによる議事妨害を封じられた。

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