ばらまきバイデン政権の裏で起きる意外なこと 長期金利上昇やインフレ以外にも心配の種?

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バイデン政権における経済政策の司令塔は、ご存じジャネット・イエレン財務長官である。米連銀議長時代は、粛々と金利を上げるセントラルバンカーという印象だったが、財務長官としては旗幟鮮明なリベラルで、労働経済学専門の経済学者という地金が蘇ってきたようである。

「コロナ感染で失われた約1000万人の雇用が回復するまで、敢えて強力な財政支出を継続する」と歯切れがいい。

なんとなれば、国際金融危機以後のアメリカ経済は、研究開発投資の減少や労働参加率の低下など、負の履歴効果があって潜在的な供給能力が低下している。ゆえに力強い総需要と労働市場の逼迫という「高圧経済」(High-Pressure Economy)を作り出す必要がある。イエレン氏はこの持論を試す覚悟のようだ。

気を付けるべきは、長期金利やインフレだけじゃない?

日本で言えば、不良債権問題によって低成長が続いた1990年代に、もっと徹底的な財政支出で需要を喚起しておけば、長期にわたるデフレに陥らずに済んだのではないか、あるいは就職氷河期世代が減って、その後の生産性の低下を避けられたのではないか、といった感じだろうか。

バイデン政権としては、今回のARP法はあくまでも緊急措置に過ぎず、今後は2兆ドル規模のインフラ投資法案を目指すだろう。これまた困難な立法プロセスとなるはずだが、こういう大規模な実験を本気でやりかねないのがアメリカという国である。つまりは「雇用の回復のためなら、景気の過熱も大いに結構」「足りない後悔よりも、多過ぎる後悔を」ということになる。

アメリカが本気で「高圧経済」を目指すとしたら、当面は輸出の増加など日本経済にもメリットがあるだろう。その一方で、「コンテナ不足」みたいな思わぬとばっちりもありそうだ。気を付けるべきは、長期金利やインフレだけじゃないのかもしれない(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

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