期待の再エネ「バイオマス発電」の理想と現実 国内材確保が難しく、輸入木材が急増している

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経産省が2019年に示した試算によると、北米東海岸の木質ペレットを輸入した場合、その温室効果ガス排出量は高効率なLNG火力発電所と同水準であることが示された。つまり、再生可能エネルギーであるバイオマス発電でも、使う燃料によっては火力発電並みの温室効果ガスを排出するというわけだ。

ただ、丸紅や再エネ大手のレノバなどのバイオマス発電事業者でつくるバイオマス発電事業者協会(BPA)によると、「北米東海岸から木質ペレットを輸入する場合、大型船を活用すれば、高効率なLNG火力発電所に比べて温室効果ガスの排出量は半分程度に抑えられる」と指摘する。

また、低炭素化対策として輸入バイオマス燃料に対する需要は今後も伸び続ける可能性がある。石炭火力にバイオマス燃料を混ぜて運転したり、石炭火力発電所をバイオマス発電所へ転換することで、発電の際の温室効果ガス排出量を減らしたとみなされるためだ。

輸入材のバイオマス発電は有効か

実際、三菱商事は関西電力と共同で相生バイオエナジーを2017年に設立。関電が兵庫県に保有する相生発電所2号機(37.5万キロワット)の燃料を重油・原油から輸入した木質ペレットに変更し、バイオマス発電所として運営している。

「(輸入材を使用するバイオマス発電が)カーボンニュートラルであるか否かの議論については見解が分かれているが、少なくとも既存火力発電資産の低炭素化には有効」(三菱商事広報)と意義づけている。

バイオマス発電大手の中には国内材の利用にこだわる事業者もいる。東証1部上場のエフオンは国内で4つのバイオマス発電所を運転している。同社の島崎知格社長は「輸入バイオマス燃料と国内材を使った場合とでは実際のCO2排出量がまったく異なる。顧客からの再エネ100%の電力が欲しいとの要望に本当の意味で応えるためには輸入バイオマスではなく、国内材を使うべきだ」と語る。

【2021年3月16日15時33分追記】初出時の記事にあるエフオン社のバイオマス発電所の数を表記のように修正いたします。

エフオンが運転する出力約2万キロワットの発電所の場合、1日当たり500トン強もの木質チップが必要になる。燃料が十分確保できる場所でなければ、発電所の立地は難しい。島崎社長によると「発電所から100キロ圏内で燃料の約7割を集められること」が目安になるという。

同社では林業者に一定の条件と値段を提示して調達しているが、いつ、どのくらいの量を調達できるかについてはムラがあるため、発電所に広い敷地を用意して貯蔵量を確保している。

とはいえ、バイオマス発電における国内材の活用には限度がある。どのような設備で、どのようなバイオマス燃料を使うのが適切なのか、慎重に考える必要があるだろう。政府は今夏にもエネルギー基本計画を見直すこととしている。原子力発電をどう位置づけるかなど論点は幅広い。が、あらためてバイオマス発電がどうあるべきかの議論は避けては通れないだろう。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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