期待の再エネ「バイオマス発電」の理想と現実 国内材確保が難しく、輸入木材が急増している

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FIT導入後、多くの事業者がバイオマス発電に参入したが、中でも圧倒的に多いのは海外材を使う事業者だ。2012年に7.1万トンにすぎなかった木質ペレットの輸入量は、2020年には約202万トンにまで急増した。2019年末時点で導入済みの発電設備がまだ145万キロワットであることを考えれば、輸入量は今後も大きく増える可能性が高い。

アメリカの木質ペレットメーカー大手のエンビバ社は2018年、住友商事との間で2021年から年間25万トンの木質ペレットを供給する契約を結んだ。また、エンビバ社は三菱商事との間でも年間63万トンの供給を2022年後半から開始する契約も結んでいる。今後も海外材を利用した複数のバイオマス発電所が運転を開始する予定で、引き続き輸入量は拡大しそうだ。

国内材はなぜ活用されないのか

日本は国土の7割弱を森林が占めており、バイオマス発電の原料には事欠かないはず。であるのになぜ、国内材は活用されないのか。

背景にあるのが著しく衰退した国内林業だ。日本では戦後、ハウスメーカーが安価で加工しやすかった海外材の導入を進めた。林業者にとって一番利益を生むのが家屋の柱などに使われる用材で、バイオマス燃料に使われるのは家屋などに使われない低質材だ。

さらに、山林の権利問題も林業に暗い影を落としている。山の権利関係は複雑で、明治時代の登記がそのままで相続登記がなされないケースもある。権利者が複数におよび特定できないことも珍しくなく、誰の土地がはっきりしない山林で林業を営むことは難しい。結果的に国内材を活用したバイオマス発電所は、林業が盛んな北海道や東北、九州などに限定されている。

バイオマス発電所の運営コストのうち約6割を燃料費が占める。コスト低減のためには発電所の大型化が求められる。こうした大型バイオマス発電所では年間10万トン以上の燃料を消費するが、「国内材だけではそうした規模の数量を確保は困難」(住友商事)なため、海外材に依存する発電所が多数存在することになった。

だが、こういった海外材を利用したバイオマス発電は、「カーボンニュートラルと呼ぶにふさわしくない」との指摘もある。なぜなら、伐採から加工、輸送、燃焼に至るまでの流れを見たときに、輸入材は国内材に比べて温室効果ガスの排出量が多くなってしまうからだ。

住友商事も「海外材のライフサイクルでは、輸送過程で大半の温室効果ガスが発生している。国内材と比べると海外材のガス排出量は多くなる」と認める。

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