期待の再エネ「バイオマス発電」の理想と現実 国内材確保が難しく、輸入木材が急増している
政府が掲げる2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス実質ゼロ)の実現に向けて、再生可能エネルギーの導入が進められている。
再エネの中でも間伐材や廃材などを原料にしたバイオマス発電は、風や日照量に左右されず、安定した電源として期待されてきた。しかし、そのバイオマス発電の持続可能性に疑問の声が上がっている。
バイオマス発電に専門家が警鐘
2月11日、欧米や日本の500人を超える科学者が連名でアメリカのバイデン大統領や菅義偉首相に対して書簡を送った。書簡は「バイオマスエネルギーのために樹木を伐採し、木材の大部分を燃料に転用することで、森林に蓄えられるはずの炭素を放出させる誤った動き」があると指摘。木材の燃焼効率は化石燃料よりも悪いため、「化石燃料を使用した場合の2~3倍の炭素が大気中に放出される可能性が高い」と警告した。
地球環境問題の調査活動などを行う財団法人「地球・人間環境フォーラム」の飯沼佐代子氏も、「仮に発電に費やした木材分の木を植えていくことで将来的に炭素吸収を促すとしても、短期的に大量のCO2が排出されることになる。このことは2050年にカーボンニュートラルを目指すという政府方針にも反している」と警鐘を鳴らす。
日本では再エネの普及を狙い、固定価格買取制度(FIT)が導入され、バイオマス発電も再エネ電源の1つとして推進された。政府が2018年に策定したエネルギー基本計画では、2030年度の電源構成のうち、バイオマス発電は4%前後とされている。
バイオマス発電は使用する燃料などで売電価格が分けられており、国内の間伐材を使うと1キロワット時当たり32円、海外輸入材などの一般木材だと同24円と、普及に向けて手厚い価格設定がなされた。
経済産業省は、2030年度までに一般木材を燃料とするバイオマス発電で最大400万キロワットに及ぶ電源の導入を見通していた。だが、2019年12月末時点でFITに認定された設備は747万キロワットで、FIT開始前の設備と合わせると、経産省見通しの2倍近い763万キロワットが導入されそうだ。
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