「議論するカップル」がフランスでは日常のワケ 映画で知るフランスの男と女と家族と文化

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フランス映画にみる恋の始め方(写真:kupicoo/iStock)
Netflix(ネットフリックス)やHulu(フールー)、Amazon Prime Video(アマゾンプライムビデオ)など動画配信サービスでドラマや映画を楽しむ人が増えています。昨年は「梨泰院クラス」「愛の不時着」が話題となりましたが、海外コンテンツは韓流ドラマだけではありません。
気軽に海外旅行に行けるその日まで、埋もれた名作、フランス映画を掘り起こし、フランスの「文化の香り」に触れてみるのはどうでしょうか。パリ郊外の大学で映画理論を学んだ筆者の目に映る、フランス映画とフランスに住まう人をお伝えします。

恋の始まりは気の利いたセリフから

“T’as d’beaux yeux, tu sais.”(ねぇ知ってるかい、君はとても美しい瞳をしている。)

映画「霧の波止場」(マルセル・カルネ監督、1938年公開)でジャン・ギャバンがミシェル・モルガンを最初に口説いたときに使った最も有名なセリフだ。ミシェル・モルガンは当時18歳。強力な目力がある美しい少女はシンプルに答える。

“Embrasse-moi”(キスして。)

80年以上の長きにわたってこの映画は、「詩的なリアリズム」を表現した名作として語り継がれている。

セリフ、はフランスではとても大事だ。

フランスでは気になる相手に話しかけるとき、それなりに気の利いたセリフを言い、相手もそれなりの返しをする。例えば「あの頃エッフェル塔の下で」(アルノー・デプレシャン監督、2015年公開)で、17歳の主人公ピエールが、その後の人生に強い印象と影響を与えるエステールを口説いたときのやり取り。

「うちの妹と同じクラスだよね。」
「知ってる。あなたが私の後つけてるの気づいてないと思った?私自分のこときれいだと思わないけど……。まぁ、お尻は悪くないかな。」
「囲碁をやりにうち来ない?」
「囲碁?なにそれ?」
「中国の遊びだよ。教えてあげるよ。」
「聞いたこともないわ。というか、名前ももう忘れたわ。」
「いい?まずこれが碁盤で……。」
「ぜんぜん覚え切れない。」
「もちろん1回じゃわからないよ。絶対もう一度会わないと。」
「しょっちゅう会わないといけないの?」
「もちろん、しょっちゅう定期的にね。最初の2年間は多分君もぎこちないだろうから、それから、少しずつ慣れていって……。」
「飽きたりしない?」
「まさか!すごく楽しいんだから。」
(筆者訳)
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