「議論するカップル」がフランスでは日常のワケ 映画で知るフランスの男と女と家族と文化

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カップルがつねに自分の意見を言い合っている、ということはつまり思ったことはなんでも口に出さないと伝わらないということでもある。ここはフランスで恋愛をしたい、と思ったらまず一番におさえておきたいポイントだ。

ちなみに、先にあげたフランソワ・トリュフォー監督の「家庭」には、日本人女性キョウコが登場する(演じているのは、パリコレモデルの松本弘子さん)。主人公アントワーヌはこのキョウコと浮気をし、クリスティーヌと別居することになる。だが結局、キョウコと一緒に食事をしているにもかかわらず何度も席を立ち、妻に電話をする。

なぜか。

理由は、「キョウコはいつもニコニコしている。しかしそうやってほほ笑むだけで何も話さない。そして僕が何か面白いことを言うことを期待している。退屈で死にそう」だからだ。

とにかくしゃべる、議論するフランスの恋

フランソワ・トリュフォー監督は日本人女性を「神秘的でコミュニケーション不可能」な存在として描き、フランス人女性との落差を際立たせる女性として登場させている。誇張しすぎではないかという批評もあるが、まったく間違っているとも言い切れないだろう。

日本ではうんうんとうなずく(表面的には)ニコニコ聞き上手と言われる女性が、ガンガン自分の意見を戦わせたりする女性よりも、多くの男性からの支持を集める傾向にあると感じる。

フランスではお互い好意があっていい感じだと思っている同士でもまずは、喋る、議論する。「私はそう思わない」「そんなのおかしい」「なぜなら、うんぬんかんぬん……」と続く。これを言ったら相手が傷つくかな、せっかくのアイデアに水をさしてしまうからやめておこうかな、などはあまり考えることなく思ったことを口に出す。

もし、「すごい!」「いいね!」などと答えたら「どの辺がいいのか」「どのあたりがすごいのか」と理由を聞いてくるだろう。個人的には、面倒くさくもある。

ともかく、議論ができないとフランスでの恋は難しそうだ。

山口 志野 ライター

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やまぐち しの / Shino Yamaguchi

1978年生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科を卒業後、広告会社で勤務。2018年退職し、40歳で渡仏。パリ郊外にあるギュスターブ・エッフェル大学のマスター(大学院)文化芸術学部映画学科に2年間在籍、2020年ディプロマ(修士課程修了証)取得。現在はパートナーと10代の娘と同居しパリ在住。

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