仮にMMTが正しくても「特効薬にはならない」訳 積極財政による日本経済再生の可能性と限界

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仮にMMTが正しいとしても、「MMTにのっとって政府支出を増やせば、日本は復活する」というほど単純な話ではないといいます(撮影:尾形文繁)
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
彼は退職後も日本経済の研究を続け、著書『日本企業の勝算』などで継続的に、日本を救う数々の提言を行ってきた。
アトキンソン氏の従来の研究の特徴の1つは、日本経済の問題点を「供給側」から明らかにしてきたことにある。そこで東洋経済オンラインでは、アトキンソン氏による「需要側」を分析も紹介していく。
今回は「生産性が低いのは需要が低迷しているからであり、その原因は緊縮財政にある」という主張を検証する。

「生産性が低いのは需要不足だから」は正しいか

「生産性が低い原因は、需要不足です。そして、その原因は、政府が緊縮財政を長年行ってきたからです」

前回の記事(「デフレだから生産性向上は無理」という勘違い)を読んだ読者から、こういったコメントがありました。

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生産性向上は日本経済の最大の課題なので、数回にわたってこの指摘が正しいのか、冷静かつ客観的に検証してみたいと思います。この意見のどこまでを肯定できて、どのような示唆が得られるかを探っていきます。

先ほどの指摘をする人たちは、「デフレは、供給に比べ需要が足りないことが原因で起きているので、需要を増やすべきだ」という理屈を展開しています。そして需要が足りないのは緊縮財政に原因があるので、財政を積極出動し、インフレに持っていけば、経済は復活するという主張をしていると推察できます。

財政の健全化に反対するこの見方の延長線上で、消費税凍結を主張するのも、理屈としては理解できます。なぜなら増税もデフレ要因の1つだからです。

この意見に対する一般的な反論は「日本はすでにGDPに対する国の借金が世界一なので、積極的に財政を出動することは危険だ」という主張です。すると彼らは、MMT(モダンマネタリーセオリー)を持ち出し、「先進国の場合、国の支出はインフレになるまでいくら増えても問題ない」と主張し始めます(MMTについての考えは後段で説明します)。

次ページデータで見ると「日本は緊縮財政」は正しくない
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