生活習慣病の兆候は「胎児期」に出ている衝撃 人生の過ごし方で体内時計がずれることも
ヒトは大昔、暗くなったら眠り、明るくなったら起きて活動する生活リズムで生きていくと決めました。現代社会では、正確な24時間の繰り返しで営まれる学校社会生活の時間割を無視した生活を送ることはほぼ不可能です。赤ちゃんの体内時計形成は、この学校社会という生活のリズムに適応できるものでなければなりません。
しかし年齢層に関係なく、夜ふかしや不規則な生活が蔓延し、中枢時計がずれたり揺らいだりして、学校社会との間にさまざまな程度の時差が起こっています。それによって、全身体内時計の歯車のかみ合わせの狂いや不安定さが生じ始めています。
この状態を、私は「系統的体内時計混乱」と呼んでいます。極めて重大な現代のこの健康被害は、胎児期からの生得的な素質に加えて、日常生活の夜型化(ずれ=シフト)や不規則性などが原因と考えられることから、「生活習慣病」として理解すべきだと私は考えています。
読者の皆さんにはなじみがないかもしれません。しかし、これから述べる発達障害、不登校・引きこもり、うつなどの系統的体内時計混乱による健康被害はまさしく、私たち日常生活のありように端を発する生活習慣病といえるのです。
なお老年期にあたる疾患群については動物実験を主体とした研究もあり、ヒトの健康被害に直接当てはめられるかどうか確立されていない情報も含まれています。あくまでも将来の健康被害を予防するための情報であることをお断りしたいと思います。
発達障害は系統的体内時計混乱
健康被害の第1に挙げられるのが発達障害です。発達障害では、睡眠障害、自律神経失調症、夜尿症、不登校、引きこもり、てんかん、糖尿病、うつなどがあらわれやすくなります。いうなれば、1人の子どもが複数の診断名を同時に引き受ける「診断名の羅列」が起こります。
診断名の羅列は、概日リズム体内時計の異常による生命維持機構への悪影響というメカニズムで起こります。医学的には「概日リズム形成異常による生命維持機能の不調を基本とする全身性の疾患」です。これが「系統的体内時計混乱」です。
ですから、よくいう社会にうまくなじめないという一側面に着目して発達障害を理解しようとするのではなく、全身性の疾患という認識のもとに対応を考える必要があるでしょう。医学的な視点を踏まえた全体像をみることで真の理解を引き寄せるのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら