生活習慣病の兆候は「胎児期」に出ている衝撃 人生の過ごし方で体内時計がずれることも

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睡眠と「うつ」は生涯を通じて相互に関連するといわれていますが(Hasler BP, 2010 およびCarpenter JS, 2017)、子どもの睡眠と「うつ」との関連性を調べた研究はほとんどありません。ただこれに近いものとして、私たちの研究では、子どもの体内では、一方では活動を支える自律神経である交感神経機能が起こり、それが休息を支える副交感神経機能を抑制して長期間の不均衡が起こると両方ともに機能が低下し、頑張ることも休息をとることもままならない究極の疲労が起こると解釈しています(Miike T, 2004 および『不登校外来』三池輝久、診断と治療社、2009年)。

最近、興味深い報告があったので紹介しましょう。1歳半、幼児期、8歳齢時点における睡眠のトラブルと抑うつ症状の関連について前向き調査を行ったところ、1歳半での短い睡眠時間(10時間以下)、夜間のひんぱんの覚醒(3回以上)は、8歳齢時点での抑うつ症状の発症を予測することにつながるという報告です(Sivertsen B, 2020)。前向き調査とは、ある集団について、あらかじめ調査目的を設定して一定期間追跡、比較する調査方法です。

乳幼児期に適切な睡眠を

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この報告は、乳幼児期の早期に適切な睡眠・覚醒リズムを形成することが、将来のうつ発症を予防することを示しています。

多くの精神疾患(心的外傷後ストレス障害、ADHD、双極性障害、大うつ病性障害、アルコール依存症、統合失調症など)では、ストレス度の高いライフイベント(結婚式や葬式)への脆弱性が増強され、そのことが概日リズム体内時計や体内時計に関連する遺伝子にも影響を与えると考えられています。

それゆえ精神疾患では、睡眠・覚醒リズム障害、自発運動の変化、異常な内分泌機能といった概日リズム異常を特徴とすると報告されています(Landgraf D, 2014)。

また、「時計遺伝子」に変異がある動物モデルを使った研究では、概日時計と精神疾患との関連をさらに支持するデータも提供されているので、こうした研究により、概日リズムと精神疾患の関係は今後さらに明確になっていくと思います。

三池 輝久 小児科医、小児神経科医

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みいけ てるひさ / Miike Teruhisa

1942年生まれ。熊本大学医学部卒業。熊本大学名誉教授。日本眠育推進協議会理事長。30年以上にわたり子どもの睡眠障害の臨床および調査・研究活動に力を注ぐ。2016年、熊本県玉名地域保健医療センターにて「子どもの睡眠と発達外来」を開設。著書に『子どもの夜ふかし 脳への脅威』(集英社新書)など。

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