生活習慣病の兆候は「胎児期」に出ている衝撃 人生の過ごし方で体内時計がずれることも

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さらに幼児期以降に起こる疾患の1つに、行き渋りや不登校、引きこもりがあります。幼児期から思春期については拙著『子どもの夜ふかし 脳への脅威』(集英社新書、2014年)や『学校過労死』(診断と治療社、1994年)や『不登校外来』(診断と治療社、2009年)に、学童期から青年期については『「学校」が生きる力を奪う』(22世紀アート、2020年、Kindle版)に詳述しましたので、本項では不登校から重症の引きこもりに至る道筋を補足的に説明します。

重度の引きこもりに至ってしまうケース

①不登校・引きこもり生活といった学校に通えないという心身の状態は、基本的に睡眠相後退症候群という昼夜逆転傾向の概日リズム睡眠障害を伴う「社会的時差ぼけ」状態として起こる(Tomoda A, 1994 およびSivertsen B, 2013 およびHochadel J, 2014 およびHysing M, 2015)。

②不登校・引きこもり状態では生命維持機能を担う脳機能低下を伴うために、本人には自分の身体に何が起こっているか自覚できない。

③自分でもまったく動かすことのできない心と身体を前にして戸惑うばかりの子どもたちは、自らを責める毎日を送る。

④そこに親からの「何とかしろ」という「責」の言葉と出合うと、自責の念とともに不安が増幅し、あがいてもどうにもならない状況を理解してくれない大人へのいらだちと怒りの感情が芽生えて増幅する。不安と怒りは「同居」しており、互いが刺激しあう状態にある。

⑤通常、コミュニケーションの場面では、脳機能が相手の話や表情を読み取りながら解釈して対応するが、体内時計の混乱があるとこの機能が著しく低下するためうまく対応ができずパニック状態となる。

自分自身への悲しみ、将来に対する不安・怒り・恐怖が強くなり、学校社会で元気に活動する友だちや社会に対する嫉妬心と怒りが増大する。外にでたいという欲求は増すものの他人の目が気になる。環境や他人への対応の困難さが起こり、対人恐怖感が募って外出がまったくできなくなる。

社会に向けられた怒りが、ときに事件の引き金となる事実があると私は認識しています。こうした事実から目を背けることは、決して彼らの助けにならないでしょう。不登校・引きこもりが心の弱さなどではなく医学生理学的背景によるものである、つまり病態であることを理解したうえで社会が適切な援助を行うことが重要だと思うのです。

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