ウォール・ストリートと極東 政治における国際金融資本 三谷太一郎著 ~「動機は利潤」が形成した日米間「信頼」の内実

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 「1920年に成立した中国に対する日英米仏の四国借款団は、第1次世界戦争を契機として台頭した同時代の国際主義的理念と当時の中国をめぐる国家的利益との結合の所産であった」。この四国借款団の成立は、満州における日本の権益を既得のものとして承認する意味をもっていたが、この借款を担ったのがウォール街の金融資本家たちであった。

もちろん彼らは「国際正義の観点」や「理念」によって行動したのではなく、「動機は利潤」にあり、「国際正義の観点はビジネスの観点を補強するものとして意味を」もった。しかし結果として彼らのビジネス(経済活動)は、さまざまな借款を通して、日米を中心とする相互の国内政治に影響を与え、実際の国家間の「信頼」の内実を形成したとも言えるのである。

著者はウォルター・バジョットを引きながら、取引における「信用」の意味を最後に語る。それは概念や組織あるいは制度ではなく「それらを担う職業的金融家そのものとそのあり方である」と。

碩学の40年にわたる研究の集大成であり、近代日本政治史の重要な一断面である。

みたに・たいちろう
日本学士院会員、宮内庁参与、東京大学名誉教授。専門は日本政治史。1936年岡山に生まれる。東京大学法学部卒業。著書に『新版 大正デモクラシー論』『増補 日本政党政治の形成』『近代日本の戦争と政治』『政治制度としての陪審制』など。

東京大学出版会 5880円 280ページ

  

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