「アキレス腱」語源の英雄が絶命した悲しき理由 足首以外は不死身だったトロイア戦争の立役者

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ギリシャ神話に登場する英雄アキレウスの物語をお届けする(写真:VictorHuang/iStock)
西洋文明の起源の一つである「ギリシャ神話」を知っておくと、欧米の文化的背景をより深く理解できるようになる。宗教学者の中村圭志氏の新著『教養として学んでおきたいギリシャ神話』を一部抜粋・再構成し、今回は「アキレス腱」の名前の由来となった英雄アキレウス(アキレス)の物語をお届けする。
前回:神なのに人間臭い「ギリシャ神話」凄い権力闘争

トロイア戦争が本当にあったのかはわからない

かつてトロイア戦争というものがあった、とギリシャ人は語り伝える。アテネの哲学者ソクラテスが生きていたのは前5~4世紀だが、トロイア戦争を題材とする叙事詩『イリアス』を歌った詩人(ホメロスと呼ばれている)が生きていたのが前8世紀、そしてトロイア戦争が起きたと言われているのが前13世紀頃である。

トロイアらしき古代遺跡を発掘しても「ここで戦争がありました」という記念碑が出てくるわけではないので、正確なところは分からない。もしかしたら一個のまとまった大戦争など実際にはなかったのかもしれない。

トロイアとされる遺跡は、現トルコの北西の海岸近くにある。トロイア戦争は――叙事詩の告げるところでは――エーゲ海対岸のギリシャ系諸国が海の向こうの異国と戦った「世界戦争」であった。

ギリシャ連合軍が都市国家トロイアをやっつける波乱万丈の大河ドラマが幾本もの民族的叙事詩となった。トロイア戦争を扱っているのは『イリアス』ばかりではなかったが、他の叙事詩は散逸してしまった。有名な「トロイの木馬」の原話も、失われた詩の中で詳しく語られていたらしい。

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