「アキレス腱」語源の英雄が絶命した悲しき理由 足首以外は不死身だったトロイア戦争の立役者
有用なファイルと見せかけてコンピューターに入り込み、あとでいろいろ悪さをしだす悪いソフトを「トロイの木馬」と呼ぶ。この怪しからぬプログラムの元祖にあたるのが、トロイア戦争でギリシャ軍が用いたと伝えられる巨大木馬であった。
アキレウスが死んだあとも戦争はだらだら続き、らちが明かないので、ギリシャ軍の知将オデュッセウスが奇策を立てた。大工仕事の得意な男に巨大な木馬を建造させ、これをトロイア城内に取り込ませたのである。
木馬というと子供っぽく聞こえるが、ギリシャ軍が建造したのは玩具の類ではなく、アテナ女神への捧げもの、御供物の類である。これが出来上がるとギリシャの大軍勢はいっせいに船に乗り込んでどこかに消えてしまった。トロイア海岸は一夜にしてカラッポになった。
巨大な木馬が鎮座していた
トロイア人が恐る恐る城外に出てみると、そこには巨大な木馬が鎮座ましましている。そして人身御供にされるところを逃れたと称する1人の男だけが残っていた。その男は次のように語る。
戦争にうんだギリシャ軍は神様への御供物の木馬だけを残して故郷に帰ってしまった。木馬がやたらとでかいのは、これが万が一トロイア城内で拝まれるようなことがあったらトロイアが不敗の強国になってしまうとの予言があったから城門をくぐれなくするためなのだ――。
トロイア人は「うまい話を聞いた!」と思った。今日の我々が送りつけられたメールの「うまい話」を真に受けて、そこかしこをクリックしてしまうようなものだ。
で、まさしくトロイア人もまたクリックした! つまり木馬を引っ張って城門を通してしまったのである。その夜、10年ぶりに安眠していたトロイア市民たちをどんな悲劇が襲ったか、書く必要はないだろう。
寝静まるトロイア城内に安置された御供物の木馬の蓋が開くや、ぞろぞろとギリシャ兵士が出てきて(50人とも300人とも!)、島影に隠れていた船団の兵士たちを城内に招き入れた。あとは殺戮の嵐である。さしものトロイアもついに陥落した。
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