「人間は脳の10%しか使っていない」は本当か 世界的に有名な「あの都市伝説」の起源と真偽
しかしこの当てずっぽうは、その後100年近くにわたり、数々の広告や映画の中で生き永らえることになる。2011年に『リミットレス』の題で映画化された小説『ブレイン・ドラッグ』(田村義進訳、文春文庫)は、人間は「脳の機能の20%しか使っていない」と説く。
2014年の映画『LUCY/ルーシー』で主張された数値は「常時10%」。イギリスのドラマ「ブラック・ミラー」は、リサーチの正確さや事実と統計を用いた作りで評判が高いが、2017年のある回でこの迷信にスポットを当て、「人間は好調な日でも脳の能力の40%しか使っていない」と説明した。これらすべてが着目しているのは、「人類の最も大きな(ただし秘められた)潜在能力を解き放つ」というアイデアだろう。
専門家の見解は
言うまでもなく、この迷信は広く浸透している。しかし事実ではない。
アメリカのラジオ局、NPRの番組の短い音声アーカイブにこんなものがある。司会者の前説に続き、映画『LUCY/ルーシー』の一場面から、モーガン・フリーマンのおなじみの渋いバリトン声が流される。「もしも脳の機能に100%アクセスできたらどうしますか? どんなことが可能になるでしょうか?」。
すると、神経科学者のデイヴィッド・イーグルマンが辛辣なコメントを差し挟む。「私たちが今こうしたことをできるのは、まさに脳を100%使っているからなんですけどね」。
数々の証拠がこの言葉を裏付けている。多すぎて紹介しきれないくらいだ。
ブリティッシュコロンビア州にあるサイモン・フレーザー大学のベイリー・ベイヤースタイン心理学教授は、主要な科学的知見をもとに、この迷信のおかしな点を説明している。それを僕の言葉で紹介しよう。
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