世界を旅する写真家が感じた「ダッカ」の息吹 予定調和とはかけ離れた出会いに満ちている

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人々は気さくで、歩いていると何度も何度も声をかけられる。一番多いのは「What is your country?」で、二番目は「ハワユー?」と「ホワッツユアネーム?」である。

回答した後に「and you?」とこちらが続けても、答えが返ってくることはほぼない。何かを尋ねたいというよりは、とにかく一方的に話しかけたい、知っている英語を使いたいということなのだろう。

声かけ以上にぼくを疲弊させるのは、人々のぶしつけな視線である。外国人がめずらしいのはわかるのだが、あんなにジロジロ見なくてもいいではないか。遠くから瞬きもせずにじっと見られていることも多く、大袈裟ではなく、どこにいても必ず誰かがぼくを見つめている。

無言で他人を見つめる恥ずかしさがない

無言で他人を見つめることに多少の恥ずかしさを感じるのが普通の人間だと思うのだが、バングラデシュの人にはそれがない。よくいえば素直でストレート、悪くいえば無遠慮で配慮に欠ける。

こうした人々からにじみ出るある種の「自由さ」は、社会の隅々に浸透している。すべて手作りのリキシャは、それぞれ意匠が異なり、車体に描かれているペインティングもインドの人気俳優から謎の柄までさまざまだし、三輪タクシーも同じように見えて、カーテンを付けていたり、格子の目を楕円にしたり平行四辺形にするなど、必ず何か手を加えている。

バスはどこかの国で使われていた中古なので、それぞれ形が異なる。車体にはどう考えても面白がって描いているとしか思えない図柄があふれていて、無味乾燥な統一デザインはどこにもない。

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