世界を旅する写真家が感じた「ダッカ」の息吹 予定調和とはかけ離れた出会いに満ちている

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ダッカの人々は、あらゆるものを自分仕様にカスタマイズしてしまう。できあがった既製品を買うよりは、部品から買い揃えて自分で作ってしまったほうが安上がりなのだろう。

市場では、モノの部品が細かく分類して売られており、あらゆるモノは解体され、再生する。壊れたらおしまいではなく、壊れたらつねにそこから新しいものが生まれていく。

衝撃の出会いが続く街

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ダッカを歩いたときの印象をずらずらと述べてきたが、これだけの強烈な違和感を覚えるということは、すなわち驚きが大きいということである。旅をするときにぼくが最も重要だと思うのは、驚きと発見だ。

それらが大きければ大きいほど、旅の密度が高まる。その意味でバングラデシュは、予定調和とはかけ離れた衝撃的な出会いに満ちていて、ガイドブックではガイドしきれない希有な旅先の1つであると言える。

あふれかえる人々のあいだで破壊と再生を繰り返し、波打つようにうごめき続けるダッカと、ぼくは確かに再会した。ダッカは生き物である。このように感じられる都市は、今までの経験上、この地以外にはどこにもない。

石川 直樹 写真家

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いしかわ なおき / Naoki Ishikawa

1977年東京生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。2008年『NEW DIMENSION』、『POLAR』で日本写真協会賞新人賞、講談社出版文化賞写真賞を受賞、2011年『CORONA』で土門拳賞、2020年『EVEREST』、『まれびと』で日本写真協会賞作家賞を受賞。2008年に開高健ノンフィクション賞を受賞した『最後の冒険家』ほか著書多数。

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