65歳を超えても「働ける人」「働けない人」の境界 「アーリーリタイア」のためには何が必要か?

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アパレル小売店で販売員として働く伊賀啓子さん(仮名・51歳)は、70歳定年を「消極的だが歓迎」しています。

「立ち仕事がしんどくなってきましたし、会社を辞めて好きな音楽演奏に打ち込みたいという気持ちはあります。ただ、夫が病気で休職していた時期があり、老後資金の準備ができていません。あと20年働くと思うと気が重いですが、何とか生活できることを前向きに考えようと思います」

このように70歳定年の受け止めは、その人の会社・仕事や立場・経済状態などによってまちまちのようです。

3年前にある企業の研修の中で40代・50代の中間管理職と定年後の生活について話し合う機会がありました。その時は、「よくわかりません」「将来は不確か。あれこれ考えても仕方がない」「今は仕事に集中している」といった意見が目立ちました。

ところが今回インタビューした会社員は皆、定年延長が自身の生活に与える影響や何歳まで働くのかという問題を真剣に考えていました。

この3年間で、働き方改革、年金の引き下げ、必要資金2000万円問題、大手企業の早期退職募集、そして新型コロナウィルスの感染拡大と、会社員の働き方を巡る変化がありました。こうした変化を受けて会社員は、自分の働き方を見つめ直すようになったのでしょう。

「アーリーリタイア」という生き方

そして今回、何人かがアーリーリタイアに言及していました。伊賀さんは「将来もし可能なら」という願望のレベルでしたが、吉田さんは真剣に検討している様子でした。

アーリーリタイアの希望を明確に語っていたのが、金融サービス会社に勤務している松田直人さん(45歳)です。

「50歳までに引退し、田舎に移住したいと考えていて、実現に向けてライフプランを練っているところです。蓄えはそんなにありませんが、独り身なので、家庭菜園とかやってシンプルに生活をすれば大丈夫かなと」

欧米では成功した経営者や投資家が50歳前後で引退することが多く、アーリーリタイアは成功の証しだとされます。一方、日本では、定年まで、あるいは自営で生涯働き続けるケースが多く、経済的な余裕がないのに自発的に引退するというのは、極めてまれです。松田さんのような中高年が増えているとすれば、日本人の働き方は大きく変わりつつあるということでしょう。

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