次に、②まん延防止、国民の生命・健康の保護、国民生活・国民経済の混乱防止のため「特に必要があると認めるとき」にあたること、について見ていきます。
「特に必要があると認めるとき」とは何を指すのでしょうか。各知事への事務連絡では、対象となる施設やその類似の業種が、クラスターが発生するリスクが高いものとして認識されているうえに、当該施設において、いわゆる「3密」に当たる環境が発生し、クラスターが発生するリスクが高まっていることが実際に確認できる場合などをいう、とされています。
つまり、その業種一般に共通するリスクと、当該施設の個別的なリスクがいずれも高い場合を想定しているといえるでしょう。
過料は前科にはならない
興味深いのは、先ほどの事務連絡において、「感染防止対策を講じていることについては、要請に応じない『正当な理由がある場合』には該当しないが、例えば命令の際に、『特に必要があると認めるとき』に該当するかどうかを判断する際の考慮要素とすることが考えられる」との記述があることです。
つまり、時短要請に反して営業していた事業者が、手指の消毒やマスク着用などの感染防止対策を徹底的に講じていた場合、それが要件①にある要請に応じない「正当な理由」にはならない一方で、当該施設の個別的なリスクを下げる効果は期待できますから、要件②の「特に必要があると認められるとき」に当てはまらず、結果として命令を回避できる可能性があるということです。
事務連絡でこのような記述があるということは、政府としても命令の発動にはなるべく謙抑的でありたい、謙抑的であるべきだ、と考えていることがうかがわれます。
そして命令に従わない事業者には、30万円以下の過料を科すことができるようになりました。過料とは法律違反についてお金を支払う制裁です。過料は、お金を支払う制裁である点で罰金と似ていますが、刑事事件で裁判所が科す罰金とは異なり、前科にはなりません。
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