「時短拒否で過料は効果なし」と言える苦い前例 裁判員制度では無断欠席が多いのに適用されず
新型コロナウイルス対策の特別措置法の改正案が、1月22日に閣議決定され、開会中の通常国会に提出された。
改正案には、休業や営業時間短縮に応じない事業者に最高で50万円の「過料」の罰則を科すことが盛り込まれた。過料とは、金銭を徴収する行政罰のひとつ。罰金や科料といった刑罰とは違って前科はつかない。
感染拡大のいわゆる「第3波」が襲来して、東京都などではアルコールを提供する飲食店に再三の時短営業を要請するも、応じない店舗がでてきた。感染抑止の引き締めと、実効性を持たせることが念頭にある。
だが、「過料」にどれだけの効果が見込めるのだろうか。むしろ、まったく効果は期待できない、と言っても過言ではない。なぜなら、「過料」が罰則として設けられていながら、まったく機能していない制度が現実に日本社会の中にあるからだ。
それが裁判員制度である。
一度も過料が科されたことがない!
殺人などのいわゆる凶悪事件の刑事裁判を対象に、2009年から導入された裁判員裁判は、毎年20歳以上の国民の中から裁判員の候補者名簿を作成して、該当者には前年末に通知される。
そして、実際に裁判が開かれる当日、もしくは裁判が長期にわたる場合には事前の「選任手続き期日」に地元の地方裁判所に、候補者名簿から選ばれた人たちが呼び出される。どんな事件を担当するのか、事前に知らされていないし、選ぶこともできない。招集されてはじめて知らされ、事件の関係者でないことや、拒否する正当な理由がないことなどを確認して、そこから抽選で裁判員に選ばれる。
たとえ裁判員にならなかったとしても、仕事を休んで裁判所に行かなければならない。この時、呼び出しに応じずに無断欠席すると、10万円以下の過料が科せられることが裁判員法で定められている。
ところが、制度がはじまって10年以上になるが、一度も過料が科せられたことがない。
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