1月7日、首都圏の東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県で2度目の緊急事態宣言が発令された。
記者会見を行った菅義偉首相は、「棒読みだ」「覇気がない」「逆に不安になる」など、散々な言われようだった。しかし、感染症の専門家として、コロナ診療にあたる現場の医師として、筆者はこの会見の内容を評価している。
菅首相は、「何としてもこれ以上の感染拡大を食い止め、感染を減少傾向に転じさせる。そのために、今回の緊急事態宣言を決断した」と理由を説明した。つまり、緊急事態宣言発出の理由をあくまで“感染拡大の防止”とし、“医療崩壊の回避のため”とはしていなかったからだ。
日本は本当に医療崩壊を起こしかけているのか
筆者の周辺を含め、間接、直接に聞く医療現場の疲弊の声は日に日に大きくなっている。1月2日には東京、埼玉、千葉、神奈川の4知事が西村康稔経済再生担当大臣と会談し、「1都3県における感染者数と、医療提供体制の現状を踏まえると、直ちに徹底した人流の抑制を図る必要がある」と詰め寄っていた。
目の前の住民の命を預かる自治体の長としては、致し方ない要請であったといえる。医療の受け皿が足りないという現実の前では、ひとまずは流行そのものを抑えるための社会的介入を求めざるをえなかったのだ。
しかし、そのことを直接的な理由として、かなり強い副作用を伴う緊急事態宣言に踏み切るということの“本質的な是非論”をこのまま放置してはならない。
ここでは、ややもするとぼんやりとしたイメージだけで語られがちな医療逼迫そして医療崩壊という問題をいくつかの基礎的なデータを踏まえて一考してみたい。
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