過料30万円、ついに施行「改正特措法」の注意点 実効性を高めるための強い措置が可能に

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今回の改正で、緊急事態宣言の前段階や解除後など、緊急事態宣言が出されていない状態であっても対策が講じられるように、「まん延防止等重点措置」が新設されました。事業者に対する要請、要請に従わない場合の命令を出すことが可能となり、この場合の命令違反には20万円以下の「過料」を科すことができます。

もっとも、まん延防止等重点措置としての命令を出す要件も、要請に従わないだけでなく、「正当な理由」がないことと、「特に必要があると認めるとき」にあたることが必要です。

なお、要請や命令に際しては必要な範囲で立ち入り検査ができるようになりました。拒んだ場合は20万円以下の過料を科すことができます。

罰則・過料の適用は「慎重に運用」となっている

過料は行政が実効性を担保するための仕組みとしてよく利用されています。身近な例ですと、たとえば、引っ越しをしたときは14日以内に転入届を出す義務が住民基本台帳法で定められていて、違反すると5万円以下の過料が科されることになっています。

特措法とあわせて改正された感染症法においても、感染者が宿泊療養などの要請に応じない場合は入院を勧告し、それでも応じない場合や入院先から逃げた場合には50万円以下の過料を科すことができるようになりました。また、保健所の調査に対して正当な理由なく虚偽の申告をしたり、調査を拒否したりした場合も30万円以下の過料を科すとしています。

今回の法改正では、特措法も感染症法も、実効性を担保するための方法として過料の罰則が導入されたことは注目に値しますし、報道でもその点がクローズアップされているように思います。

しかしながら、国会においても、「罰則・過料の適用に当たっては、国民の自由と権利が不当に侵害されることのないよう、慎重に運用すること。さらに、不服申立てその他救済の権利を保障すること」という附帯決議がなされています。要請に従わなかったからといって直ちに命令が出され、過料が科されるわけではありません。

法改正の意味を冷静に理解して、引き続き国民一人ひとりが感染予防、感染拡大防止に取り組むことが大切でしょう。

岩﨑 崇 植月・岩﨑法律事務所 弁護士

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いわさき たかし / Takashi Iwasaki

横浜生まれ。首都大学東京都市教養学部法学系、慶應義塾大学法科大学院を経て、2012年弁護士登録。弁護士会や自治体での法律相談のほか、「国家戦略特区東京圏雇用労働相談センター」の相談員としてベンチャー企業の労務相談も担当する。簿記、行政書士、FP技能士の資格を取得し、経理、許認可、ファイナンシャル・プランニング、不動産等、関連分野にも造詣が深い。

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