ソニー、PS5や鬼滅で絶好調でも残るハードル 時価総額はトヨタ、ソフトバンクGに次ぐ3位に

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2021年3月期は760万台超、2022年3月期は1480万台超の出荷を計画しているPS5は、世界的な半導体需給の逼迫により、台数を上積みすることは難しい。新作公開ができない映画部門は、2021年3月期こそ制作・広告費減により増益だが、2022年3月期は前年ヒット作不在によるライセンス収入の減少が見込まれる。足元ではこうした不安もあるが、それでも全体としては業績の急降下を示唆する兆候は見られない。

問われる複合企業経営

今後の焦点は、2022年3月期から始まる新たな中期経営計画でどのような施策を打ち出すかだ。ソニーは4月には社名を「ソニーグループ」に変更し、エレキ中心だった組織体制を改める。先立つ2020年9月には、金融子会社、ソニーフィナンシャルホールディングス(SFH)の完全子会社化に踏み切った。数多くの事業を抱える「コングロマリット(複合企業)」として、どのような経営をしていくのかが問われる。

2月3日の決算会見では、来期以降に関して強気な姿勢が目立った。十時裕樹CFO(最高財務責任者)は「次期計画では、現中計からスケール(規模)を上げて戦略投資をしていく」と投資拡大を宣言した。

現中計の3年間では、約1.6兆円を戦略投資に割り振った。目立つのが、エンターテインメント領域への投資だ。2020年は米ゲーム開発会社「エピックゲームズ」に出資したほか、米アニメ配信サービス「クランチロール」の買収(約1200億円)も発表。

良質なコンテンツのIP(知的財産)を確保し、ゲームや音楽、エレキ製品などソニーが持つ事業との相乗効果を狙う。この方向性は、次期中計でも変わらなそうだ。

コングロマリット経営では、個別事業の価値の合計に比べ、全体の企業価値が過小評価される「コングロマリットディスカウント」への批判が付きまとう。十時CFOは「個々の事業は強くなっており、利益率に対してのアテンション(注意)が全体として高まっている」と強調した。

ただ、矢継ぎ早に仕掛けた投資の効果は十分ではない。2021年中には『鬼滅の刃』の家庭用ゲームが発売される予定だが、こうした分野をまたいだ事業での成功を積み重ねる必要がある。コングロマリットの成功者となるには、まだハードルは残されている。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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