子ども目線はこんなに楽しくて、厳しい! 子どもとアートから見えてくる世界

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在日コリアンの家の中

金仁淑(キム・インスク)『ひいおばあちゃんと私』(「SAIESEO〈サイエソ〉:はざまから」シリーズより) 2008年

最後に紹介するのは、在日コリアン三世の金仁淑(キム・インスク)の写真作品だ。部屋の中をよく見ると、コリア的なものと日本的なものが混在している。

「在日コリアンの彼女だからこそ撮れる作品。韓国でも日本でもない文化が見てとれると思います。この写真からは、ひいおばあちゃんから4代にわたる歴史が見えてくる感じがします」

金仁淑は自分の生まれ育ったコミュニティにカメラを向ける。明るく笑っている朝鮮学校の女の子たちの写真も印象的だ。

「在日コリアンの権利を声高に主張するつもりはなく、等身大の自分とコミュニティを見せたいという気持ちが強かったのだと思います。たとえば米国ではチャイニーズ・アメリカンやジャパニーズ・アメリカンが普通にいるけれど、日本では国籍=民族ととられてしまう。そんなことも考えさせられる作品です」

彼女は現在、ソウルを拠点に活動している。

これらのほか、奈良美智、クリスチャン・ボルタンスキー、照屋勇賢、近藤聡乃らの作品が展示され、「子ども」をキーワードに、いろいろな見方、考え方を示してくれる。見終わって、どう思ったか、人と話したくなる展覧会だ。


「ゴー・ビトゥイーンズ展 こどもを通して見る世界」

2014年5月31日~8月31日

森美術館
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
10:00~22:00(火曜は17:00まで、入館は閉館の30分前まで)
会期中無休
一般1500円、高校・大学生1000円、中学生~4歳 500円(展望台 東京シティビュー入館可、スカイデッキは除く)


 

仲宇佐 ゆり フリーライター

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なかうさ ゆり / Yuri Nakausa

週刊誌のカルチャーページの編集・執筆を経て、美術展、ラジオ、本などについて取材、執筆。全国の美術館と温泉をめぐり歩いている。

 

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