バイデン政権の通商政策に過度な期待は禁物

自由貿易、米中対立、WTO……アメリカ・ファーストは続く

大統領執務室のバイデン大統領。通商政策では脱トランプを仕掛けるがどこまで進かは未知数だ(写真・Bloomberg)

2021年1月21日、バイデン政権が発足した。新政権の通商政策の分野において、トランプ政権時代よりバイデン政権に対する期待感は大きい。しかし他方で、とくに短期では過度の期待は禁物、という見方が、識者の概ね一致した見方だ。

通商問題のプライオリティは低い

前政権では通商政策が極めて大きい政治課題として取り扱われた反面、バイデン大統領は選挙戦から通商政策について多くを語っていない。それでも民主党の政策綱領(“2020 Democratic Party Platform”)やその他選挙公約文書、そして選挙戦中からの発言より、以下の基本姿勢が窺い知れる。

第一に、通商問題のプライオリティはバイデン政権にとって低い。就任前の政権移行期間では、コロナ禍の収束や温暖化、人種平等、経済問題が優先課題だった。また、政策綱領も、「国内産業競争力を強化するための投資に先んじて新たな貿易協定を締結しない」と述べている。バイデン大統領はもとより、政権発足後にはホワイトハウスのサキ報道官も通商課題への対応の先送りを示唆しており、当初2年程度は目立った動きは期待できないだろう。

第二に、バイデン政権は、今後の通商協定は米国労働者・中間層の利益になるものであり、労働だけでなく人権、環境に関する規律を含むものを目指す。もともと労働者階層は民主党の支持層だった。また、今回の選挙でも、敗れたとはいえトランプ前大統領は史上最多得票となる7400万票を獲得し、とくにバイデン大統領はトランプ現象の象徴となった中西部のラストベルト諸州で苦戦した。こうしたトランプ支持層に配慮し、バイデン大統領は今後も製造業重視のアメリカ・ファースト的な通商政策をある程度維持せざるをえない。事実、1月25日に政府調達における「バイアメリカン強化」の大統領令に署名している。

第三に、バイデン政権は一方的措置による孤立主義ではなく、同盟国と協働して国際社会に関与し、多国間主義的アプローチを採る。アメリカ通商代表部(USTR)代表にキャサリン・タイを指名したことは、そのメッセージと受け取られている。

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