最後に、引き続き中国には対決的な姿勢を鮮明にしている。1月25日のダボス会議で、中国の習近平主席がバイデン政権に新冷戦的思考からの脱却を呼びかけたが、サキ報道官は中国の権威主義、拡張主義を指摘し、従来の対中強硬路線に変更はないと一蹴している。ただ、バイデン大統領自身が「無謀な貿易戦争」と批判するトランプ政権のような一方的措置の応酬ではなく、同盟国との連携による中国との対峙を目指す。
トランプ政権では徹底して遠ざけられていたWTO(世界貿易機関)だったが、同盟国との対話を重視し、多国間主義を標榜するバイデン政権には、これまでとは異なる対応をとることが期待される。事実、1月29日のWTOミニ閣僚会合でも、アメリカはWTO改革への積極的な関与を公言している。
WTO事務局長はアフリカ候補で同意
喫緊の課題は空席の事務局長の選出だが、バイデン政権はほどなくオコンジョ=イウェアラ候補の選出に同意する。対立候補の兪明希(ユ・ミョンヒ)は撤退を表明しており、バイデン政権と調整がついたことを意味する。WTO事務局長の限られた職務権限を考えると、同候補が選出されることでアメリカの通商利益がただちに損なわれることはない。新政権の方針転換、およびWTOとの関係改善を印象付けることはアメリカにとって悪くない選択だろう。
機能停止中の上級委員会の改革はより困難だ。そもそもアメリカの不満は、アメリカのダンピング防止税や相殺関税に対し、上級委員会が厳しい判断を下してきたことに端を発する。これらの措置が主にラスト・ベルトの鉄鋼産業の保護手段である以上、トランプ政権時代からの大きな方針転換は難しい。
何よりも、上級委員の指名阻止を最初に行ったのはオバマ政権であり(この時は特定の委員の再任拒否のみ)、上級委員会批判には超党派の支持がある。むろん、多国間枠組みを重視する姿勢から、まともに議論さえしないトランプ政権とは異なり、問題解決に向けて積極的に協力するだろう。しかし、その要求は厳しいものとなる可能性はある。
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