ソニー、デジカメ市場を一変させた「破壊力」 ミラーレス市場でシェア4割の圧倒的存在感
「デジタルカメラ市場を破壊したのはソニーだった」
大手カメラメーカーのある幹部は苦々しそうに振り返る。
というのも、2020年のデジカメ出荷台数は、2010年のピーク1億2146万台の10分の1以下になる見込みだからだ。ここまで市場が縮小した主因は、手軽に撮影できるスマートフォンが急速に普及したからだ。スマホを使えば、撮った写真を簡単に加工でき、他人と共有することもできる。SNSに手軽に投稿できるなど、スマホは写真の楽しみ方を大きく広げた。
ミラーレス市場で圧倒的な存在感
ただ、この幹部が言う「破壊」の意味はマイナス面ばかりではない。ソニーは伝統的なデジカメ市場のあり方を大きく変え、新しい時代のカメラ市場を作り出す「創造的破壊」を行ったと受け止めることもできる。
この10年間、市場縮小以外にも多くの変化がカメラ市場に起きた。最も大きいのは、市場を牽引する製品が一眼レフからミラーレスカメラへシフトしたことだ。その流れを創り出し、一眼ミラーレス市場で約4割のシェアを占めて圧倒的な存在感をみせているのがソニーだ。
2010年当時のソニーのデジカメシェアは、キヤノンに次ぐ2位だった。ただ、その中身はコンパクトデジカメ2410万台に対し、一眼カメラが95万台。キヤノンの一眼カメラが570万台、ニコンが396万台であることに比べると、プロ・ハイアマチュア層向けカメラでソニーの存在感は薄かった(数字は2010年4月~2011年3月の出荷台数、テクノ・システム・リサーチ調べ)。
2019年に退職したニコンの元社員は、「(ソニーのカメラ事業は)家電メーカーが家電としてデジカメを売っているだけだった」と評する。ソニーが、コニカミノルタのカメラ事業を買収し、一眼レフカメラ事業に参入したのは2006年のことだった。だが、一眼レフ市場はフィルムカメラ時代から高いブランド力を持つキヤノンとニコンの寡占状態で、この2強の牙城を崩すのは簡単ではなかった。
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