クリーマが貫いた「数字だけで評価しない」価値 なぜベンチャーが「大手資本」に勝てたのか

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丸林氏は「クリエイターを支援する道具がそろっている」と話す。最近始めたクラウドファンディングでアトリエ資金や作品制作資金を集めるサービスなど、これまで一貫して出品者であるクリエイターの視点でサービス設計を行ってきた。

それらがCreemaの強みであることは否定しないが、機能設計や表面的なデザインは、より資本体力のあるライバルには簡単に真似られてしまう。彼らが生き残ってきた最大の理由は、優れた作品を創作するクリエイターを吸引するマーケットプレイスの空気感だ。

日本のハンドメイド市場はまだまだ伸びる

一方でハンドメイド商品の市場が、どこまで成長できるのか、その成長余力に対する疑問もある。しかし、丸林社長は「ハンドメイド」「クラフト」といったキーワードで市場をくくるべきではないと主張する。

「たとえば音楽。インディーズとメジャー。どちらのレーベルでリリースされていても音楽は音楽。よいものは売れるし、つまらないものは売れません。音楽という成果物は同じなんです。同じように量産品でもハンドメイドでも、対価を支払って入手する商品という意味では違いはありません」(丸林氏)

どんなブランドファッションも、そのスタートはハンドメイドのインディーズであろう。その後、成功して洋服メーカーとしての地位を確保する頃には量産品となっているかもしれないが、その商品デザインが持つ価値が変わるわけではない。

「洋服をCreemaで購入するのか、ZOZOで購入するのか。顧客の視点で言えば、ハンドメイドか量産品かは重要ではありません。どちらのアプリを使うほうが、自分好みの商品を見つけられるか。洋服ならZOZOがライバルでしょうが、これは領域ごとに異なり、さまざまな商品領域において、Creemaに掲載される商品と他サービスの商品。どちらがいいかの競争」という丸林社長の主張は、実は前述のマーケットプレイスの位置づけとも関連している。

すなわち、Creemaのライバルは既製品を使うさまざまなECアプリであり、ハンドメイドのマーケットプレイスアプリではないということだ。手作り手芸のフリーマーケットを中心に据えてこなかったことで、ブランドファッションやメーカー製品と比較される存在になってきているとも言えるだろう。

クリーマのオフィスにはCreemaクリエイターの作品が陳列されている(筆者撮影)

一方で非ハンドメイド商品と並列に評価されるマーケットとして消費者に認知されるようになれば、その先には「量産品ではない」ことがプラスに作用する面も多い。デザイン性など作家の個性豊かな感性に根差す魅力はもちろんだが、オーダーメイドでのカスタマイズが可能だからだ。

サイズ、素材、色合いなど、さまざまな形で“ワンオフ”の作品を発注・受注する仕組みはハンドメイド商品のマーケットプレイスならではだ。

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