クリーマが貫いた「数字だけで評価しない」価値 なぜベンチャーが「大手資本」に勝てたのか

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その後、丸林氏はある経営者との出会いをきっかけに、ミュージシャンの道と決別し、将来、28歳で起業することを心に決めつつ、社会人としての経験を積んでいた。

そして事業を立ち上げる際に思いついたのが「輝けるだけの才能を持ちつつも輝く機会を得られていないクリエイターに、才能を発揮する機会を提供する。そんなことを事業化できないか」という発想だった。

【2021年1月25日18時00分追記】初出時、 一部事実関係に不正確な記述がありましたので、上記のように修正しました。

「才能があるからといって、努力をしたからといって、報酬が十分に得られるわけではないのが創作クリエイターの世界。しかし、才能ある人が希望を持って努力でき、公平に評価される環境を整えることができれば、その先には“才能ある人は成功という評価を得られる”という枠組みを生むことができる。そんな夢を持てる場を作りたかった」(丸林氏)

結果としてハンドメイドのマーケットプレイスを運営しているという点で、競合のminneと機能などはよく似たサービスになっている。しかし、このアプローチの違いが両者を異なるサービスへと導いた。

「クリエイターが集まるコミュニティ」を作るため、全国の作家たちに出品を依頼して回ったことが奏功し、憧れのクリエイター、知る人ぞ知るクリエイター、そんなクリエイターたちと切磋琢磨したいと思う、クリエイターたちがCreemaの方向を向くようになったからだ。

「クリエイターをサポートできるのは自分だけ」

もっとも、Creemaのリリースを準備していた頃、丸林氏はサービス開発をやめようと思ったことがあったという。開発を始めて1年が経過した頃、アメリカでエッツィーというハンドメイド商品専門のマーケットプレイスが存在していると知り、すでに誰かが手がけたサービスはやりたくないと思ったからだ。

思い直したのは、ほかの創業メンバーから「エッツィーがあったとしても、日本でクリエイターをサポートできるのは自分たちしかいないじゃないか」との声が上がったからだ。

「本来、創作の世界には夢があるはず。自分の才能だけで、どこまででも登って行けるはず。ところが夢へと向かう道は極端に少なく細く、とても届かないと感じてしまう。しかし、夢がない世界の中では才能が集まらないし、才能が社会で生かされることもない。ビジネスの世界なら収益や株価、勉強ならばテストの点数などで才能を見てもらえるが、創作の世界ではごく一部の幸運や飛び抜けた才能がなければ、持っているセンスをポイントにしてもらう方法がない。これでは文化として育たないと思ったんです」(丸林氏)

一方で「金儲けには興味がない」と言い切る。「自分のやりたいこと、実現したいことをかなえるための手伝いをする。その結果、ありがとうと言ってもらえることに価値がある。Creemaは、そんなクリエイターファーストの信念を貫いてきた」(丸林氏)

実際、丸林氏の経営する会社には“華やかさ”はない。将来性がないという意味ではない。堅実に一歩ずつ前に進む様子を感じる。

こうした姿勢が、より魅力的なクリエイターを集めることにつながっているのだろう。

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