フェイスブックが「VR」に力を入れまくる理由 日本法人代表が語る「Oculus」新型機の進化
――具体的には?
FRLのチームは日本でかなり人を採っている。彼らがどんな働きをしているかというと、まずは販売チャネルの開発だ。先代のクエストの販売は公式サイトとアマゾンだけ、つまりオンラインだけだったけど、今回は大手の家電量販店をパートナーにし、店頭販売を強化した。やはりこういう商品は実際に体験してから買いたいというニーズも大きい。
それからマーケティングを強化し、テレビCMやネット広告を展開した。あとは快適に使ってもらえるように、VR内のキーボードなどあらゆる部分で日本語に対応するようにした。コンテンツストアも日本向けに作って、海外コンテンツでも日本語化して提供することを徹底したほか、カスタマーサービスも日本語で対応できる体制を拡充している。
対ユーザーと同じく重視したのが、対デベロッパーの部分。アメリカ企業が出す開発者向けの資料というのは英語オンリーという場合が多いけど、今回は50万語分くらい日本語に翻訳した。人的サポートもアメリカの本社にあるチームが直接行っているが、日本の開発者向けに関してはそこに所属する日本人メンバーが責任持って行っている。外部開発者を巻き込むコミュニティの醸成は(製品・サービスの経済圏を広げるうえで)非常に重要だ。
VRが使われる可能性が高まった
――消費者への普及という意味では、VRはまだまだ入り口に立ったにすぎない印象です。フェイスブックが今これだけ総力を挙げる理由は?
2020年が非常に大きな転換点だったのではないかと。新型コロナウイルスの感染拡大で、人と人との距離やコミュニケーションの取り方を変えざるをえない1年だった。そういう中でゲーム、スポーツ、音楽ライブなどのエンタメはもちろん、ビジネスの面でもVRの需要が出てきていると思う。
コロナ収束後の生活様式でも、全部が全部コロナ前の状態に戻ることはないと思う。あらゆる場面でVRが使われる可能性は確実に高まっているし、それもあってわれわれも投資を加速している。オキュラスでも個人のリモートワークを快適にする機能や、法人向けのソリューション「Oculus for Business」を強化中だ。
――法人向けソリューションには、具体的にどんなものがありますか。
事業としてはアメリカから始めている。やはりコロナもあって、地方まで出かけてビジネスを進める出張文化の代替ニーズなどが強い。例えば、ジョンソン・エンド・ジョンソン インスティテュート。医療従事者向けに教育を行う同社は、オキュラスを使って外科医の手術のトレーニングを実施している。
新しいツールを実際の手術で試すことには大きなリスクが伴う。そのため、使用の頻度が上がらず、現場になかなか定着しないという課題があった。そこでVRを使うことによって、バーチャル空間でリアルと同じように使用感を試せる。遠隔で使い方のトレーニングも行える。医療もベテランから若手への技の伝承がある世界なので、それを遠隔で行える点が評価され活用が進んできている。
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