フェイスブックが「VR」に力を入れまくる理由 日本法人代表が語る「Oculus」新型機の進化

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ほかにも、例えば食品・飲料メーカーが小売りの棚の販売効率を見る際に、通常だと現場に行って並べてみてという感じだけど、VRでシミュレーションしながら現場指導も行う、というものもある。あとは高級ホテルの従業員トレーニング。オペレーションが非常に複雑な仕事で、先ほどの外科手術と同様、トレーナーが現地に行かずとも効率的に指導できる点が喜ばれている。こうしたニーズを丁寧に拾い、開発を強化していきたい。

――エンタメに限らない用途を開拓できると、産業としての裾野が広がりそうですね。日本でも今後こうした活用が増えていきますか。

実は日本国内でも問い合わせが非常に多く、行政から、企業からなど、需要の高さを感じている。(遠隔トレーニングのような業界特化型の活用だけでなく)バーチャル空間でデスクワークを行えるVRオフィス「Infinite Office」といった取り組みも始めている。需要はどんどん上がっていると思っており、活用の幅はさらに広がる。

リモートで働くことが半分当たり前になりつつある中、テクノロジーだけじゃなくカルチャーの部分も含めて「どこまでできるか」を見極めなければならない時期に来ている。そういう今、単にテキストや音声、動画で意思疎通を取るだけではない、VRで空間を共有する関わり方が、会議や商談で価値を発揮する可能性があると思う。

まず進化を体験してもらう必要がある

――新型機は「非常に戦略的な価格」とのことですが、ここで儲からないとすれば、収益拡大という面では何がカギになりますか。

まだまだ投資フェーズなので、まずは「VR・ARの世界でも人と人とのつながりを作る」というミッションの実現のためにできることをやっていく。何か確立したビジネスモデルがある世界ではないので、一方向に進むというより、いろんな方向に関心を寄せてテストしているという段階だ。

あじさわ・まさひろ/フェイスブックジャパン代表取締役。2000年オグルヴィ・アンド・メイザージャパン入社。2008年、日本マイクロソフトにてPC及びモバイルディスプレイ広告ビジネスを統括。2012年、Twitter Japanに入社、上級執行役員広告事業担当本部長、日本・東アジア地域事業開発担当本部長などを歴任。2020年1月から現職(撮影:梅谷秀司)

もちろん端末が普及して、ゲームを中心としたアプリのマーケットプレイスが立ち上がってくれば、ビジネスとしてそれなりに大きくなるとは思う。とはいえフェイスブック社全体で見れば、広告ビジネスから得る収益が圧倒的に大きい。VR・ARに関しても、人々のつながり作りを実現する中で新しいビジネスモデルはおのずと出てくると思っている。

――長丁場になりそうですね。

大前提としてやっぱり、これだけ進化しているんだというのをできるだけ多くの人に体験してもらわないといけない。(初期のハードで植え付けられた)「VRってそんなもんか」という印象を塗り替えていくことが大事。今までにない経験をできる、そういう感動を感じてもらえると、市場の広がりも早まるのではないか。

今回、新型機で僕がいちばんプレーしているゲームは「テトリス」なんだけど、絶対やってもらいたい。今までだと、コンセプトがよくてもクオリティとしてなかなか返ってこなかった。それが進化したハードでプレーすると、まるで本当に宇宙の中でテトリスをやっているみたいな感動がある。こういう気づきをできるだけたくさんの人に届けるのが最優先課題だ。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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